飼い主の元に走って駆け寄る子牛2頭/エアロファームさん(@aerofarm_5865)提供
飼い主の元に走って駆け寄る子牛2頭/エアロファームさん(@aerofarm_5865)提供

飼い主を見つけるやいなや、まっすぐに駆け寄ってくる2頭の子牛。その犬のように愛らしい姿がTikTokに投稿され、「めっちゃ可愛い」「牛ってこんなに懐くの!?」「いいなーこんな生活したい」と大きな注目を集めています。

投稿したのは、和歌山県で牧場を営む酪農家のエアロファームさん(@aerofarm_5865)。話題の動画の裏には、牛たちとの深い絆、そして「酪農の“当たり前”を伝えたい」という、“若き牛飼い”の熱い想いがありました。

エアロファームさんが酪農家を志した原点は、農業高校時代のある“気づき”でした。

「スーパーで売っている牛乳って、“牛が乳だしてるんやなぁ”くらいにしか考えていませんでした。でも、牛も人間と同じで子牛を産まないと乳は出ない。農業高校に進学して、酪農家の“当たり前”が、普通の人には全く当たり前ではないことに気づいたんです。そこから、牛乳を通して酪農家を知ってもらいたい、という気持ちが芽生えました」 

この想いが、彼女のすべての行動の原動力となっています。

動画で話題になったのは、生後9カ月のアマナと8カ月のサクラ。性格は正反対ながらも深い絆で結ばれた2頭は、飼い主であるエアロファームさんを「ヌシ」として慕い、群れの一員として認識しているといいます。

「私が走ると、アマナとサクラも着いてきてくれる。いつも私を含む“3頭”で群れになって生活しています(笑)」

その絆は日々の交流からも伺えます。ブラッシングの順番をめぐって焼きもちを焼くこともあれば、散歩で片方が遅れると、必ずもう一方が鳴いて呼んだり、立ち止まって待っていたりするそうです。

エアロファームさんは、命と向き合う上で最も大切なのは「観察力」だと語ります。

「動物は人へ何か異常を話してくれるわけではありません。『なんでこんなことしてるんやろ?』とか『どっか痛いんかな?』って想像することで命に寄り添える。観察力があるから命に寄り添えるし、命を大事にするから観察力が育つんです」

そんな彼女の夢は、ヨーグルトなどを生産する「6次産業化」を進め、消費者が牛に直接「ありがとう」を伝えられる環境を作ること。

「身近なようで、身近じゃない『畜産』。そこを“伝えていく”“感じてもらう”のが私の使命です」

TikTokの動画は、その夢に向けた大きな一歩。愛らしい子牛たちの姿を通して、今日も酪農の現場にある命の尊さを私たちに伝えています。