夫の浮気は許すべきか制裁するべきか ※画像はイメージです(metamorworks/stock.adobe.com)
夫の浮気は許すべきか制裁するべきか ※画像はイメージです(metamorworks/stock.adobe.com)

31歳で専業主婦のA子さんは、イヤイヤ期を迎えた2歳の息子のお世話で振り回される毎日を過ごしています。彼女は同い年の夫がいつも仕事で夜遅くまで頑張ってくれていることを心の支えとして、平凡ながらも安定した生活を送っていました。しかしその日常は、ある日の深夜に崩れ去ることになります。

きっかけは、たまたま目に入った夫のスマートフォンで見かけたメッセージ通知です。その通知には見知らぬ女性の名前と「次はいつ会える?」という言葉が表示されていました。A子さんはこれを見てすぐに夫を問い詰めると、夫はあっさりと職場の部下との過ちを認めました。

A子さんは頭に血が上り、すぐにでも離婚を突きつけたい衝動に駆られます。しかし両親がすでに他界し、義両親が自分の味方になってくれるとは思えない状況を考えると、A子さんははすぐに離婚を突きつけられないでいました。

これにより、夫へと向かっていた怒りの矛先は相手の女性へと向かいます。せめて慰謝料と謝罪文を要求しなければ、この気持ちは収まりません。ただ夫がもしも、心から反省しもう二度と裏切らないと誓うなら、息子のためにやり直してもいいという気持ちも、心のどこかに残っていました。

復讐か、再構築か、A子さんは何をすべきなのでしょうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞きました。

■慰謝料や謝罪文を求める前に冷静に

ー夫とは離婚した方が、精神的にも良いように思いますか

精神的な苦痛から一刻も早く解放されたいというお気持ちは、痛いほどよくわかります。しかし、今すぐに離婚することが、必ずしもA子さんの精神的な安定につながるとは限りません。

専業主婦で小さなお子さんがいらっしゃる方が、頼れる身内もいない状況で離婚に踏み切ると、直後から深刻な経済的困難に直面する可能性が非常に高いです。また、養育費が約束通り支払われ続ける保証もないのが現実です。

まずは感情的になるのをぐっとこらえ、冷静に二つの道をシミュレーションしてみることが重要です。「離婚した場合の生活」と「離婚しなかった場合の生活」を具体的に紙に書き出し、メリットとデメリットを比較検討してみてください。

ー慰謝料と謝罪文を求めることができるのでしょうか

浮気相手の女性に慰謝料や謝罪文を求めることは可能です。ただし、その行動には大きなリスクが伴います。慰謝料の請求は、夫との関係を修復する方向とは全く逆の、「関係を終わらせる」ための行為になりかねないからです。

慰謝料請求は、関係修復の可能性を完全に断ち切り、離婚もやむなしという強い覚悟が固まってから、専門家の助けを借りて慎重に進めるべきでしょう。

ーその後で、夫と関係を修復させることは可能でしょうか

慰謝料や謝罪文を求めた後に、夫との関係を修復することは困難です。慰謝料請求は、相手の女性だけでなく、その事実を知る夫をも罰する行為です。

たとえ浮気をした夫に非があったとしても、自分の部下や会社での立場を脅かすような行動を取った妻に対し、「そこまでされなければならなかったのか」と、愛情が憎しみに変わってしまう可能性があります。

関係の修復を目指すのであれば、まずはご自身の怒りや悲しみといった感情を、利害関係のない第三者である専門家に相談し、冷静になることが最優先です。その上で、相手を罰するのではなく、ご自身の今後の人生をどう立て直していくかに焦点を当てていく必要があります。

◆木下雅子(きのした・まさこ)行政書士、心理カウンセラー
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)