在職中に無給の休暇を取り、職業に関する教育訓練を受けた場合、その休暇期間中に失業給付に相当する給付が支給される新たな制度が、2025年10月に始まりました。雇用保険の一般被保険者が対象で、連続30日以上の無給休暇が条件となります。
資格取得の難しさや、役職定年後の不安などを抱えるなかで、こうした制度に関心を寄せる声も上がっています。制度への受け止めや、学び直しへの思いを聞きました。
■仕事に必要な資格取得 働きながらの勉強は大変です
Aさん(関東在住、30代、エンジニア)は大学卒業後、IT企業に入社し、エンジニアとして長年活躍している中堅社員です。人当たりの良さとフットワークの軽さでさまざまな案件から声がかかることも多く、社内でも残業時間は多い方だというAさん。
エンジニアとしてもう少し専門性を高めたいという思いはありながらも、年次が上がって新入社員の研修や採用面接など「本業」以外の業務も増えており、ますます時間に追われる毎日を過ごしています。
「ウチの会社はもともと教育訓練費用として資格試験の受験費用も負担してくれますし、仕事で推奨される講座も会社で契約済みです。正直なところ、あとは時間さえあれば……という感じです。ベンダー資格もいろいろありますが、上級資格ともなると合格率は1割程度だと思います。一夜漬けではとても対応できません。現時点では会社に教育訓練休暇制度はないのですが、この給付金制度ができたことをきっかけに、制度が導入されるといいなと思っています。採用にも有利になるかもしれないと、人事部の同期にもすすめておきました」
就職先を選ぶうえでの魅力にもなりそうです。
■「役職定年」でメイン業務を外れ、今後の業務に不安
Bさん(関東在住、50代、会社員)は、来年の春に役職定年を迎える予定の管理職です。
その分野ではある程度の知名度がある専門商社で長年営業として活躍してきたことが評価され、プレイングマネジャーとしての業務を続けてきましたが、社内では「役職定年後はそれまでの業務から外れ、他部署で新しい業務に取り組む」ことが通例となっており、その点に不安を感じています。
「それまで上司だった人間がいち社員に戻って、ずっと同じ部署に居続けると新しい部課長もやりにくい、というのは理解していますので、異動は仕方がないとわかってはいます。でも、これまで数十年営業しかしてきませんでしたから、正直これから新しく何ができるのか、不安しかありません」
少しでも興味が持てる分野に異動できるように、新しいスキルや何か資格を取ろうとは思っているBさん。しかし、「なにせこの年齢なので、勉強に自信がありません」とのこと。
「これまで有給もほとんど取らずに頑張ってきましたので、このようなタイミングでリスキリングのための長めの休暇が取れるのはとても良いことだと思います。役員にも『こういう制度が始まるようです』と伝えてみました。会社にもメリットがあると思います。ただ、正直なところ、そんなに予算が余っているなら雇用保険料を下げてくれてもいいのにな、という気もしますね」
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厚生労働省が公表した2024年度の「能力開発基本調査」によると、教育訓練休暇制度を導入している企業は7.5%で、前回調査(2023年度)と比較して0.5ポイント低下しており、休暇を取得しての教育訓練制度はまだ広く浸透していないのが現状です。給付金制度との相乗効果が生まれるか、そしてニーズの高い産業分野への転換が進むかが期待されます。
◆沼田 絵美(ぬまた・えみ)人材業界や大学キャリアセンター相談業務などに20年以上携わる国家資格キャリアコンサルタント。
























