立派に成長した現在の虹来ちゃん
立派に成長した現在の虹来ちゃん

衰弱した子猫に手を差し伸べるのには、勇気がいる。その子を生涯、幸せにする覚悟が必要だからだ。かえでさん(@chuntachi)は2021年8月28日、親しいスーパーの従業員から「駐車場に子猫が捨てられている」との相談を受けた。

猫風邪を患い、ボロボロだったその子猫は「虹来(ニコ)」という素敵な名前を貰い、家族の一員として愛されるようになった。

■スーパーの駐車場でボロボロの子猫を保護して…

従業員から相談を受けた飼い主さんは、現場へ。子猫は従業員が用意したケージの中でうずくまっていた。

「元気がなく、白い毛はグレーに薄汚れていました。それでも顔に触ると、儚げにもたれかかってきてくれて…」

子猫は猫風邪を患っており、目ヤニで目が閉じてしまっていた。すぐに動物病院へ連れて行ったほうがいい。そう考え、保護をした。

獣医師から告げられたのは、カラスに突かれるなどして右目の眼球がない状態だという事実。人間が「ハンディキャップ」と捉えるものを抱えている猫の里親探しは難航するのが実情だ。

そのことを知っていた飼い主さんは里親探しを断念。子猫を「うちの子」として迎え入れた。

虹来という個性的な名前には、深い意味がある。実は飼い主さん、車に轢かれた子を弔った経験があったという。

「その子が虹の橋から戻って来たように思ったので、虹来と名づけました」

■増えていく体重が嬉しい…!戸惑いと感動が入り混じった“育猫期”

赤ちゃん猫を育てるのは、初めての経験だった。育猫中、特に大変だったのは、1日6回のご飯。

「でも、寝ては起きて『ご飯くれ~』と鳴くその声からは生命力を感じました」

保護時の体重は、700g。計るたび増えていく数字に成長を感じ、感動したという。

失った右目からは涙が出て、目の周りが汚れてしまう。家族は朝晩の点眼や目周りの汚れを優しくふき取ることが日課になった。旦那さんは、虹来ちゃんが片目を失ったことで生活に支障が出ないよう、バランスボールを使ってバランス感覚を養ったそうだ。

「そのかいあってか、今では高いところもへっちゃら。うちには虹来の他に3匹の猫がいますが、一番、運動神経がいい子になりました」

華奢な見た目だが、虹来ちゃんはまるでクライマー。脅威的な身体能力で、果敢に高い場所に登ったり飛び移ったりする。

また、以前、靴箱から開いていたトイレ扉の上に飛び移って降りられなくなった時には、上手に助けを求める術を習得した。

「飛び移った勢いで扉が動き、降りれなくなっていました。悲しい鳴き声がしたので驚いて見に行くと、分かりやすいほど困った顔で私を見下ろしていて…。夫が降ろしてあげたら、何事もなかったかのような顔で走り去って行きました」

困ったことが起きても、助けを呼べば降ろしてもらえる。そう学習したのか虹来ちゃんはその後も何度かトイレ扉の上へジャンプ。そのたびに助けを求めている。

■出会いはNNNによって仕組まれたものだった…!?

人間を上手に使う虹来ちゃんは、知的な猫。先住3匹を客観視し、驚くほどのスピードで良いところも悪いところも吸収して“人たらしにゃんこ”に成長した。

なお、虹来ちゃんは“猫たらし”でもある。

「同居猫たちはみな年上ですが、お迎え当初から優しかった。特に長男のミィとは、親子のような関係性。虹来は、ミィの振る舞いを見習っています」

ハツカネズミのように小さくて弱々しかった命が立派に成長し、まるで一反木綿のように部屋の中を飛び回っては先住猫たちと追いかけっこをしているなんて…。そう感じるたび、飼い主さんの胸には熱いものがこみ上げる

「実は虹来を保護する1カ月くらい前、引っ越しの関係で長期間預かっていた猫を娘に返してから予想以上の喪失感がありました。虹来を保護する前日はちょうど、『うちはピンクの肉球をした白猫には縁がないね』と話していたんです。虹来との出会いは、きっとNNN(※猫好きの間で噂されている架空の猫派遣組織)に白羽の矢を立てられた(笑)」

これからも、天真爛漫な性格の愛され担当でいてほしい。そう語る飼い主さんは今日も、かわいい虹来ちゃんの姿を優しく見守っている。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)