ちょうどよくない?と思った家でしたが…
ちょうどよくない?と思った家でしたが…

家は広ければ良いというものではなく、価格や管理の手間も考えると「狭すぎず広すぎず、ちょうど良い広さの家に住みたい」と感じる人も多いのではないでしょうか。

そんな“普通の広さの家”ですが、実は地域によってその感覚は大きく異なるようです。ある夫婦は、子どもの頃に過ごした環境の違いから、家の広さをめぐって意見が食い違った経験があるそうです。

■「こんな小さい家は買いたくない」

Aさん(関東在住、30代、会社員)と夫のBさん(関東在住、30代、会社員)は、大学時代に同じサークルに所属していた縁で付き合い始め、結婚した同級生カップルです。

Aさんは、急行や特急が停まる私鉄沿線の駅近マンションで育ち、都内への通勤も買い物も不便を感じたことがない環境で暮らしてきました。大学もその沿線にあり、就職後も結婚までは実家から都心の会社へ通勤していました。

一方Bさんは、最寄り駅まで車で送迎が必要な地方の町で育ち、大学進学を機に上京。学生寮から始まって、就職後は独身寮へ。家賃がかからない生活を送る中で、自然と貯金も順調に増えていきました。

お互い結婚式にはこだわらず、挙式は足の悪い祖母が参加しやすいようBさんの地元で親族のみでこぢんまりと行い、大学の同級生には会費制のパーティーでお披露目を済ませたタイミングで、新居についての話し合いが始まりました。

 「とりあえず、最初は1LDKとか2LDKの賃貸マンションに住む?その方が会社に近いし、私の会社は賃貸の人には家賃補助が出るよ」とAさんが提案すると、Bさんはにこにこしながらこう返しました。

「いや、せっかく住宅ローン減税もあるし、引っ越しの敷金礼金更新料も考えたら、若いうちから家を買ってもいいんじゃないかな?僕は姉が結婚して実家に住んでいるし、仕事を変えない限り地元に戻ることもないだろうから。ずっと寮のワンルーム暮らしだったけれど、やっぱり狭くて。結婚後はゆったりできる広さの家がいいなって思ってたんだ」

その言葉に納得し、新居購入を目標に据えましたが--。

■「普通の広さの一戸建て」ってどのくらいの広さ?

ふたりでファイナンシャルプランナーに相談し、無理のない範囲で予算をイメージした後、エリアの絞り込みや情報収集は、土地勘のあるAさんが自然と担当することになりました。

予算と「駅から徒歩15分圏内」という条件で物件を探すと、選択肢は一般的な3階建ての分譲戸建てが中心です。

「土地を買って注文住宅を建てるのは予算的にも時間的にも難しいよね」とAさんは考え、「いくつかの建売の住宅を見学してみない?」と提案しました。しかし、間取りを見たBさんが思いがけないことを言い出します。

「ねえ、これ全部狭すぎるよ。こんなに家が狭いなら、せめて庭や駐車場は広くないと」

ピックアップした物件はいずれもごく一般的な間取りで、広さも90平方メートル前後。「マンションなら十分広い方では?」と、Aさんは驚きました。

しかし、その週末、予算やエリアを度外視してふたりで物件検索をしたところ、Bさんが「130平方メートルくらいが普通の家」だと思っていたことが判明します。

Bさんの実家周辺には和室の多い昔ながらの家が多く、イメージしていたのは実家周辺の親戚や友人宅だったようです。

Bさん自身も「東京は高いとはいっても、渋谷とか青山とか銀座とか、そういう場所だけの話だと思ってた。独身寮も安かったし」と反省した様子。

しばらくは賃貸で「普通の広さ」に慣れつつ、頭金の貯蓄を頑張ることにしたそうです。

■持ち家の延べ床面積…全国平均は118.25平方メートル

Aさん夫婦は「感覚のズレ」についてうまく話し合うことができましたが、いわゆる「普通の家の広さ」については、具体的な数字で確認することができます。

国土交通省の調査によると、令和5年度の持ち家の床面積平均は地域ごとに以下のような差があるそうです。

全国平均……118.25平方メートル
関東臨海(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)……99.34平方メートル
東海(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)……128.17平方メートル
関西(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)……111.06平方メートル

地域によっては30平方メートルほどの差があることがわかります。たしかに、住まいの広さに対する感覚が異なっていても不思議ではありませんね。……!

▽国土交通省-令和6年度住宅経済関連データ「所有関係別一住宅当たり延べ床面積の推移」

(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)