家づくりの話題では、「間取りの工夫」や「ハウスメーカーの選び方」など、周囲の人からも聞きやすいテーマが多いものです。けれど、「住宅購入資金をどう準備したのか」といったお金の話になると、途端に聞きづらくなる人も少なくありません。なかには両親から住宅購入費の頭金としてまとまった贈与を受けた人もいますが、そこには別の悩みが生まれることもあるようです。
■「贈与税非課税の特例枠」の提案
Aさん(関西在住、40代、パート)一家は4年前、地元の不動産会社が開発した分譲地を購入し、注文住宅を新築しました。Aさんも夫も関西出身で、どちらの実家も車で1時間以内の距離にあります。
Aさんの実家は通勤や通学には不便な車必須の地域、夫の実家も少子化で学校の統廃合が進んでいる地域であったため、どちらの実家周辺に暮らすつもりはありませんでした。
通勤や子どもの将来の通学に便利な場所に家を建てることを両親に伝えたところ、特に反対されることもなく、予算に合う土地とハウスメーカーをスムーズに見つけ、順調に契約まで進むことができました。
その契約直前、夫の両親に報告した際、思いがけない提案がありました。
「子が家を建てるときの贈与税非課税の特例枠の分、頭金にしたらどうかしら。1000万円あればローンもだいぶ楽になるだろうし。うちの息子は一人っ子だから、将来の相続税の負担がなくなった方がいいと思うの」
夫の両親はともに公務員として定年まで勤め上げ、年金や健康面にも不安はありませんでした。老後資金にも余裕があり、申し出には現実的な裏付けがありました。
もともとAさん夫婦も余裕をもって予算を組んでいたものの、1000万円頭金を増やせば月々の返済額が3万円ほど減る見込み。ありがたく提案を受け入れることにしました。
■「ありがたい話だな」と思っていたけれど
工事は順調に進み、新居での生活も無事にスタート。ところが、しばらく経ったころ、義父から「親戚への新築お披露目はいつする予定?」と聞かれ、Aさんは驚きました。
義父母を招いて食事をしたことが“お披露目”だと思っていたAさんに、義父はこう言いました。
「まずは私の兄家族、いとこ同士ももう少し交流する機会があるといい。それから今ホームにいる叔父も夏休みには一時帰宅するから。結婚式ぶりじゃないか?もう一家の主になったんだから」
まるで説教のような口調に、Aさんは正直「面倒くさい」と思いました。
しかし夫から「とはいえ1000万円出してもらってるしなあ。一度やれば満足するんじゃない?」と言われ、渋々親戚一同を招くことにしました。
■集まった親戚に「家を建ててやった」と豪語
当日、夫は幼い頃から交流のあるいとこたちと楽しそうに過ごしていました。ところが、お酒が入った義父は、気分が高揚したのか「やっと家を建ててやれて子育ての荷が下りたわ!」と大声で発言。
「建ててやった」という一言に、Aさんは思わず固まりました。
義母が慌てて「やだ、全部ってわけじゃないのよ、ほら一部だけ」とフォローを入れましたが、義父はさらにヒートアップし、「あれだけのお金を用意したのに嫁は感謝が足りない」「普通はいつでも遊びに来てくださいってひと部屋用意するものじゃないか」と言いたい放題でした。
夫は「まあ親父も親戚に見栄を張りたいんだろ」とあまり気にしていない様子でしたが、Aさんは「これからも“感謝が足りない”なんて言われ続けるのなら、断ればよかった」と後悔したといいます。
「仲の良いママ友に愚痴をこぼしても『1000万もらえるなら我慢しちゃう~』って言われて。お金の話だから愚痴を言える相手も限られるんですよね。母に『そういうお話はありがたいけど、あとでいろいろと大変よ』って言われた意味がやっとわかりました」
確かに「大きなお金が動く=人間関係にも影響する」というのはよくある話です。将来の相続税と、今の自由。どちらを取るかは、簡単に答えが出せる問題ではなさそうです。
(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)

























