都内で事務職として働くAさん(20代)は、会社から急に「来月から制服を廃止してオフィスカジュアルに変更します」という知らせを聞いて困り果てていました。というのもAさんがこの会社で働くことを決めた理由のひとつが制服だったからです。
彼女は趣味がファッションで、常に最先端のファッションを研究し、時には自分で古着のリメイクをするほどでした。そのため、私服はオフィスカジュアルとは程遠いもので、とても会社には着ていくことができません。
しかも、20日過ぎにこの知らせが来たため、制服廃止までの猶予が10日しかないのも彼女を困らせていました。何を着ていけばいいか分からないうえ、給料日が月末のため資金も不足しています。
そしてAさん以外にも同様の悩みを抱えている同僚は多いようで、更衣室では皆が口々に文句を言う始末でした。このように制服制度を変更する場合、会社側はどのように対応するべきなのでしょうか。社会保険労務士事務所ホライズンの小島朋子さんに聞きました。
■「許可」というよりも、「同意」するかどうか
ーまず、数か月前など余裕を持った告知がなく、制服から私服への変更を指示することは、法的には許されるのでしょうか?
制服制度の廃止は、一般的には労働条件の不利益変更には該当せず、「許可」というよりも、「同意」するかどうかとなります。就業規則に「制服の変更または廃止に際しては、従業員の同意を得るものとする」といった記載がない場合、法的には個別の同意を得る必要はないと考えられます。
ーたとえばオフィスカジュアルへの変更は、準備も必要で経済的な負担となりますよね。会社側は問題視しないのでしょうか。
突然の制度変更により、準備に戸惑う従業員の方もいらっしゃるかと思います。数か月前からの事前告知に加え、制度変更の背景や理由を会社側から説明いただくこと、また従業員の意見を伺う機会を設けるなどの配慮があると、スムーズな移行と不満の軽減につながるものと考えます。
ー従業員の不満はどのように解消していけるでしょうか。
制度変更の背景には、会社としての合理的な理由やご苦労があることと伺えます。不安や疑問の声が上がった際には、その理由を丁寧に説明いただくことで、従業員の理解も得やすくなるかと思います。
なお、制服廃止により、着替えに要していた時間(労働時間)の削減や、退勤直前まで業務に集中できるといったメリットもございます。こうした利点についても併せてお伝えいただくことで、前向きな受け止めにつながるのではないでしょうか。
◆小島朋子(こじま・ともこ)
社会保険労務士/社会保険労務士事務所ホライズン代表 千葉県を拠点に活動する社会保険労務士。障害年金の代理請求を中心に、法人向けには労務に関する各種相談、給与計算業務や給与ソフトの導入・設定確認。会社と人との良好な関係を築くためのサポート。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























