結婚生活が長くなると、夫婦の間でプレゼントのかたちにも変化が訪れます。かつては花束やアクセサリーに、おしゃれなレストラン。シャンパングラスを傾けて過ごした特別な日も、子どもが生まれ、育児や家事に追われるうちに、次第に「実用的なもの」が中心になっていきます。けれど、それは本当に“プレゼント”と呼べるのでしょうか。
■「冷蔵庫がお祝い」と言い張る夫
結婚15年目のAさん(40代)の家庭では、妻の誕生日プレゼントとして夫が贈ったのは冷蔵庫でした。
正確には、冷凍庫の閉まりが悪くなってきたため、夫がAさんへのプレゼントと称して買い替えただけのこと。子どもたちは毎年、お小遣いをためて手紙やプレゼントを用意してくれますが、夫は「お父さんもちゃんとお母さんにプレゼントしたんだぞ!」と得意げに話します。ちなみに昨年の誕生日も、壊れかけたドライヤーの買い替えでした。結婚15年の節目にまで同じ調子では、Aさんも「私は大切にされているのだろうか」と複雑な気持ちになります。
ドライヤーも冷蔵庫も生活に必要なものですし、結婚当初に買ったものを長く使ってきたので、最新型の性能には感動もあります。けれどAさんの本音は、「それは家族のためのものであって、私個人へのお祝いではない」というものでした。
■「掃除機」で笑顔を求められても
Bさん(50代)は、誕生日に夫から最新式のロボット掃除機をプレゼントされました。
一見ありがたい話ですが、フルタイムで働き、普段から家事の大半を担っているのはBさん自身です。誕生日前、夫から「欲しいものはある?」と聞かれた際、「高級ブランドのジュエリー」と答えたところ「それは無理」と即却下。代わりに「最近、掃除機の調子が悪い」と話したことを覚えていた夫が、「最新型で流行りのデザイン!サイクロン式だ!」と勝手に選んで購入し、優しさをアピールしたのでした。
ところが実際には、フィルターやダストカップの掃除などメンテナンスが手間。「せっかくなら紙パック式がよかったし、相談してほしかった」とBさんはいいます。
「誕生日にサプライズで渡されて、笑顔で喜べるほど心は広くないです」とBさん。家電でも嬉しい半面、やはり“気持ちを聞いてほしい”という思いが残りました。
■「指輪の箱かと思ったら炊飯器」事件
結婚5年目のCさん(30代)には、さらに驚きのエピソードがあります。
夫から小さな箱を渡され、アクセサリーかと思って胸が高鳴ったCさん。ところが中には「高級炊飯器の予約票」が入っていたといいます。夫としては「お米が美味しく食べられる高級炊飯器が欲しいって言ってたし」という気遣いだったのでしょうが、Cさんは「宝石やアクセサリーが欲しいとは言わないけれど、どうして誕生日に炊飯器なの?」と、言葉を失ったそうです。
記念日に生活家電が選ばれることに、女性たちがモヤモヤを抱くのは共通しているようです。
■実用品=愛情の証拠?
夫側の言い分も聞いてみると、「せっかくなら役に立つものを贈りたい」という考えが多いようです。
確かに花束は数日で枯れますし、アクセサリーも好みが分かれます。家電であれば日々の暮らしを支え、家族全員がその恩恵を受けられる--合理的な夫にとっては、それこそが“最高の贈り物”なのです。
しかし妻からすると、「プレゼント=自分だけに向けた特別なもの」という思いがあります。
その食い違いが、「誕生日に洗濯機を贈られても喜べない」という結果を生んでしまうのです。
ただ、せめて「お祝い」としての象徴がほしいのも本音です。誕生日に小さな花束やメッセージが添えられるだけで、妻の受け取り方は大きく変わります。
「冷蔵庫を買ってあげたでしょ」というどや顔よりも、「いつもありがとう」のひと言のほうが、ずっと心に残るプレゼントになるのではないでしょうか。
大事なのは金額でも豪華さでもなく、「あなたを大切に思っています」というメッセージ。家電に花束を添えるのも良し、カードを一枚添えるのも良し。誕生日が「冷蔵庫の納品日」ではなく、「心に残る一日」になるような工夫こそが、夫婦生活をより豊かにするのではないでしょうか。
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夫婦間の誕生日プレゼントはどうしてますか?
▽20代妻・結婚2年目
生後半年の赤ちゃんがいるので、夫から「今年の誕生日はバースデーディナーを俺が作る」と言われ、誕生日ケーキは買ってきたものだけど、冷蔵庫いっぱいの材料を買ってきて祝ってくれたことが一番嬉しかったです。「不器用ながら私を思って一生懸命作ってくれた」という記憶が、一生の思い出になりました。
▽30代妻・結婚4年目
「選ぶ時間がない、文句を言われるのが嫌」という夫は、毎年カタログギフトを送ってくれます。そのカタログは、商品だけじゃなく高級レストランのランチや、エステやマッサージなどを選ぶことができ、それなりに嬉しいです。私から夫へのプレゼントは、「私の手料理」で良いそうなので、記念日っぽく少し手の込んだ料理を作ります。
▽40代妻・結婚12年目
私は現金をもらってます。夫曰く「好きなものを買ってきていいよ」だそうです。わかりやすいです。夫の誕生日には、普段ほとんど買い替えない私服をセールで一式そろえて渡しています。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)
























