福岡県の動物愛護団体「ハッピースマイル」さん(@kagayakuegao)がInstagramに投稿した、18歳のダックスフント「テンちゃん」救出の経緯が大きな反響を呼んでいます。
投稿には、「3日後に飼い主であるお祖母さんが施設入所。家族も犬を引き取れず、行き場がない」という切迫した状況が綴られていました。
団体代表の角谷直美さんに、緊急レスキューの裏側を取材しました。
■「またか…」高齢者と高齢犬の“社会問題”
最初の相談を受けた瞬間、角谷さんの胸に浮かんだのは“驚き”よりも“現実”でした。
「正直、『またか』と思いました。高齢者が飼えなくなり、行き場を失う犬は本当に多いんです」
しかもテンちゃんは18歳。相談のタイミングは施設入所の3日前という、あまりにも急な状況でした。
「すぐに迎えに行きたくても、予定が詰まっていて動けない。もっと時間があれば…と何度も考えました」
■毛玉、皮膚炎、匂い…「でも、愛情は確かにあった」
テンちゃんを見た瞬間、角谷さんが感じたこと。
「飼育放棄ではなく、お祖母さん自身が体調を崩し、お世話ができなくなったのだろうと感じました」
若いころは大切に育てられていたことが、写真からも伝わってきたといいます。
全身は毛玉だらけで皮膚は炎症。独特の匂いもありましたが、トリマー資格を持つ支援メンバーが夜遅くまでケアしてくれました。
■ “奇跡の里親さん”との再会 それは、1匹の老犬がつないだご縁だった
18歳の老犬を迎えてくれる里親は、通常ほとんど見つかりません。しかし今回、角谷さんが連絡した相手は、過去に1匹のシニア犬を迎えてくれた里親さんでした。
実はその里親さんが以前引き取ったのは、行き場のなかった高齢ダックス。その子はわずか3カ月の犬生でしたが、家族に深く愛され、幸せなまま旅立ったといいます。
角谷さんはその出来事を、静かに振り返りました。
「その子は3カ月しか幸せな時間がありませんでしたが、本当に穏やかで楽しい日々を過ごし、ご家族に深く愛されながら、“幸せを胸いっぱいに”お空へ還りました」
見送った後、里親さんは角谷さんにこう伝えたそうです。
「また同じような子がいたら連絡してください」
テンちゃんは、まさにその “ご縁” によって救われたのです。
■わずか3日で動いた多くの人々「1つの命をつなぐために」
保健所へ一時預かりを依頼することも考えましたが、スペース不足で断られました。
そんな中、メンバーの一人が「迎えに行けます!」と名乗り出てくれたことで、一気に動き出します。
「預かり、トリミング、搬送…多くの仲間が力を貸してくれました。みんなが繋いでくれたから、テンちゃんの命を守れたんです」
■角谷さんが伝えたいこと
今回のケースは決して“例外”ではありません。
角谷さんは、あえて次の言葉を読者に向けて語りました。
「犬を迎えるときは、今の生活だけを見るのではなく、20年先まで責任を考えてほしい」
「高齢者だからダメなのではありません。もしもの時に支えてくれる“次の守り手”を用意してほしいのです」
また、SNSには「施設でも犬と暮らせたらいいのに」という声も多数寄せられました。
「本当に、そういう施設が増えたらいいと思います。けれどまずは、飼い主自身が健康であること。愛する子と“最期まで一緒にいる”未来をつくってほしい」
■18歳のテンちゃん、新しい家族のもとへ
テンちゃんは、ハッピースマイルに一時保護され、翌日には新しい家族のもとへ旅立ちました。
18年間の犬生の最後に、“守ってくれる人たち”と“新たな家族”が現れたことは、まさに奇跡といえるでしょう。
角谷さんは最後に、静かにこう結びました。
「尊い命は、必ず誰かがつないでくれる。そのご縁を信じて、これからも救い続けたいです」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)
























