転職にチャレンジしたものの未経験の業種は難しい… ※画像はイメージです(FineGraphics/photoAC)
転職にチャレンジしたものの未経験の業種は難しい… ※画像はイメージです(FineGraphics/photoAC)

中堅メーカーで課長を務めるAさんは、勤続23年のなかで大きな失敗もなく、安定した会社員人生を送っていました。しかし、変化のない日々に自身の成長が止まったような焦りを感じ、一念発起します。世間で注目されるWebマーケティング職へ、未経験から挑戦することを決意したのです。

しかし45歳未経験の壁は厚く、応募した数十社の企業から届くのは不採用通知ばかりです。この結果にAさんは「やはり無謀だったか」と転職を諦めるのでした。

Aさんのように40代からの未経験職種へのキャリアチェンジは不可能なのでしょうか。キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞きました。

■40代のキャリアチェンジは「戦略が必須のプロジェクト」である

ー企業は40代・未経験の応募者を、実際どのように見ていますか?

採用現場で慎重に検討されるのは事実です。ただしこれは年齢による差別ではなく、育成コストと戦力となるまでの時間を踏まえた合理的な経営判断です。

ただ、同じ未経験者でも、「自分で学び成果が出せるイメージが描ける人」と「一から教えないと活躍できない人」では企業の評価は大きく異なるため、自己学習の実績や具体的な成果物を示すことは重要であると考えます。

ーキャリアチェンジに失敗し、後悔する人に共通する特徴や行動パターンは何ですか?

最も危険なのは「リセット志向」です。「今の仕事がつまらない」「人間関係が嫌だ」といった現状への不満がキャリアチェンジの動機となってしまうと、全く新しい場所で新しい自分で一からやり直したいと願う傾向があり、過去のキャリアをいったん白紙にして考えようとしてしまいます。

しかし、これまでのキャリアは捨てるものではなく、新しい分野に転用すべき資産です。例えば、営業経験があれば「顧客理解力」、マネジメント経験があれば「プロジェクト推進力」のように、経験と新職種の接続点を明確に説明できるまで整理してみてほしいです。

ー成功する人は、転職活動前からどのような準備やマインドセットを持っていますか?

キャリアチェンジに成功する人は、過去のキャリアを次のキャリアに活かす「アップデート」というマインドセットを持っています。たとえ未経験の職種に挑戦する場合でも、「ゼロからの挑戦」ではなく「経験を活かした展開」として、前職との接続を論理的に説明できます。

また、未経験職種への本気度を示すため、業務に必要な資格を取得したり、講座を受講する等の「学習の証拠」を作ります。さらに副業や個人プロジェクトなどの小さな実績を作って「既に動いている証拠」を積み上げています。

つまり「転職先でゼロから挑戦する」のではなく「小さくてもまずは自分で始める」というキャリアに対する自立の精神が強いと感じます。

ー現在転職を考えている40代の方にアドバイスを。

40代未経験転職は決して無謀な賭けでも最後のチャンスでもなく、「準備と戦略が必須のプロジェクト」です。もちろん厳しい現実はありますが、正しく着実にアプローチすることで可能性を広げることはできます。まずは、自身のキャリアの棚卸を徹底的に行い、新職種でも活かせる経験やスキルを論理的に言語化することから始めてみましょう。

◆七野綾音(しちのあやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント
やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)