「50代の夫が、末期のガンで数カ月の命と余命宣告を受けました。夫が先立ったあとのこととを思うと、とても悲しいですし、金銭面でも一抹の不安を感じます」
そう話すのは、40代女性の岩谷ミエさん(仮名)です。岩谷さんは現在、夫のマサルさんが緩和ケア病棟で余命を安らかに過ごせるようにと、病院と自宅に行ったり来たりの日々を過ごしています。高校生と中学生の2人の子どもを抱え、今後の生活や教育にかかる費用のことを考えると、不安は募るばかりです。
岩谷さんのように、夫に先立たれる未来を予見できるがために、今後の金銭的な不安が付きまとう人は少なくありません。
配偶者に先立たれることは、最も辛い出来事の一つ。別れのつらさと向き合いつつ、金銭的に少しでも準備できることはあるのでしょうか。
実は、夫(配偶者)の死後に受け取れる給付金は多数あるものの、知らないと受け取れない給付金がほとんどです。その給付金とは、一体どのようなものなのでしょうか。
■配偶者の死後に受け取れる給付金等一覧と対応窓口・期限
一般的に、配偶者の死後に受け取れる給付金には、下記のようなものがあります。対応窓口や期限がそれぞれ異なるので、注意が必要です。
◇葬祭費
国民健康保険加入者(自営業者等)が亡くなった時に、葬儀を執り行った方に対して、故人の住んでいた自治体から受け取れるお金です。
・金額:約3~7万円※自治体により異なる
・申請窓口:故人の居住地の自治体
・申請期限:葬儀を執り行ってから2年以内(自治体によって異なる)
◇埋葬料・埋葬費
健康保険加入者(会社員等)が亡くなった際、加入している健康保険から受け取れるお金です。
埋葬料は故人によって生計を維持されていた方(被扶養者など)が埋葬を行った場合に、埋葬費は埋葬料を受け取れる方がいない場合に実際に埋葬を行った方に対して支給されます。
・金額:一律5万円※組合によっては独自の付加給付有り
・申請窓口:加入先の健康保険組合
・申請期限:故人が亡くなってから2年以内(法定の期限)
◇遺族年金
国民年金または厚生年金の加入者が亡くなった時に、故人によって生計を維持されていた遺族が受けることができるお金です。遺族に支給される年金の総称で、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」を合わせた制度のことです。この制度の目的は、故人によって家計を維持してされていた家族の生活を困らず維持するためにあります。
◇遺族基礎年金
国民年金加入者が亡くなり、一定の条件をみたす時に、故人によって生計を維持していた18歳になった年度の年度末(3月31日)を迎えていない子どもがいる配偶者、もしくは親がいない18歳以下の子どもが受け取れるお金です。個人の居住地の自治体、または年金事務所か年金相談センターに申請します。亡くなった日の翌日から5年以内であれば、過去にさかのぼって請求することが可能です。
・金額
子のある配偶者が受け取る時:年間84万4900円~84万7300円+子の加算額
※金額は年度により改定される。
子が受け取る時:年間84万7300円+2人目以降の子の加算額(2人目は年間各24万3800円、3人目以降は各8万1300円)を追加する形で計算します。これを子の数で割った額が、1人あたりの額となります。
◇遺族厚生年金
厚生年金加入者が亡くなり、故人によって生計を維持していた遺族が受け取れるお金です。実際に受け取れる遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の合算になります。金額は故人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3で、年金事務所または年金相談センターに申請を行います。亡くなった日の翌日から5年以内であれば、過去にさかのぼって請求ができます。
◇死亡一時金・寡婦年金
国民年金の第1号被保険者(自営業者等)として保険料を納めていた人が、年金(老齢基礎年金・障害基礎年金)を受け取らずに亡くなった時、その遺族に支給されるお金です。遺族基礎年金を受け取れる場合、または亡くなった本人が障害基礎年金・老齢基礎年金をすでに受給していた場合は、死亡一時金は受け取れません。
死亡一時金は、遺族基礎年金を受け取れない場合に、遺族に対して1回限りで支給されます。金額は保険料を納めた月数に応じて約12~32万円です。申請期限は亡くなった翌日から2年以内です。
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間が10年以上ある夫が亡くなった時、婚姻期間が10年以上あり、かつ夫に生計を維持されていた妻(60~65歳)が受け取れる年金です。金額は夫の第1号被保険者期間に基づく老齢基礎年金額の4分の3で、妻が60歳から65歳になるまでの間支給されます。申請期限は亡くなった翌日から5年以内です。
なお、死亡一時金と寡婦年金の両方を受け取ることはできません。金額や受給期間を比較してどちらか一方を選択し、故人の居住地の自治体、年金事務所または年金相談センターに申請を行いましょう。
◇高額療養費の払い戻し
高額療養費制度とは、1カ月の医療費が、所得や年齢に応じて定められた自己負担限度額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される公的医療保険制度です。
本人が存命中から利用できる制度ではありますが、本人が亡き後にも遺族(相続人)が請求できます。
申請先は故人の居住地の自治体や健康保険組合で、診察を受けた月の翌月の初日から2年以内であれば申請が可能です。金額は医療費の負担額によって異なります。
◇未支給年金の請求
未支給年金とは、まだ受け取っていない年金のことで、亡くなった方と生計を同じくしていた配偶者や子、父母等の親族が受け取れます。年金は、偶数の月に前月分と前々月分が後払いされる仕組みなので、亡くなった月までの分が未払い金となるため、申請することで受け取ることが可能です。
金額:故人の受給額により異なる
年金事務所または年金相談センターへ、亡くなってから5年以内に申請しましょう。金額は故人の年金受給額によって異なります。
◇生命保険金(死亡保険金)
民間保険会社の生命保険加入者が亡くなった時に、受取人に対して支給されるお金です。配偶者死亡時の生命保険金は、受取人固有の財産として扱われ、原則として相続税の対象となりますが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用されます。遺産分割の対象外で、相続放棄をしても原則受け取れます。
◇退職金
在職中に死亡した際、本来本人に支払われるはずだった退職手当や功労金を遺族が受け取ることができます。相続税の対象ですが、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が設けられており、税制上の優遇が受けられます(会社の規定により、死亡退職金として遺族に支払われる場合に限る)。
■申請漏れを防ぐポイント
種類も申請先も期限もバラバラですが、実際に配偶者を亡くした後で受け取れる給付金を全て受け取った人は、給付金の申告漏れを防ぐためにどんなことをしたのでしょうか。
経験者の声を聞くと、「気持ちの整理をしながら、亡くなったあとにすることや受け取れる給付金をリスト化しておいた」という意見がありました。死亡届を提出する際に、役所職員から今後の案内を受ける方は多いようですが、全てがそのようなケースばかりではないため、自分から「今後どのような動きをしたら給付金を受け取れるのか」をまとめておくことが重要なようです。
■「知っているかどうか」はあなたの安心材料にもなる
岩谷さんは、余命わずかな夫マサルさんとの時間も大切にしながら、受け取れる給付金のリストを少しずつ作っているといいます。
マサルさんの加入している生命保険や健康保険等、全てを確認して、今後の動きを考えているようです。
「娘にはまだ小さな孫もいますし、私の今後の生活もありますから…寂しいけれど、お金という現実的な問題には向き合わないといけないですよね。今回このリストを作っていることで、夫の少し先の死にも向き合えるような気がします」
配偶者との別れは、避けては通れないこと。それでも、残された家族は生きていかねばなりません。
そんな時に、長年支えあってきた配偶者の給付金を漏れなく受け取ることは、遺されたあなたや家族のためでもあります。
「知っているかどうか」はあなたの安心材料にもなるはずです。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。
(まいどなニュース/もくもくライターズ)























