転売じゃないのにフリマアカウントが凍結! ※画像はイメージです(熊澤充/photoAC)
転売じゃないのにフリマアカウントが凍結! ※画像はイメージです(熊澤充/photoAC)

40代の主婦Aさんは、娘と一緒に大好きなアーティストのドーム公演へ行く予定を立て、2枚で2万4000円のペアチケットを手に入れていました。しかし公演の2日前に、娘が急な高熱を出してダウン。これによってAさんたちはコンサートへ行くことを断念しましたが、手元には「行けなくなって余ってしまったチケット」が残されました。

「転売目的でもないし、ただ余ったチケットなのだから、空席にするよりファンに譲った方がいい」と思ったAさんは、フリマアプリに出品することにしました。出品ページには「急病で行けなくなりました」と書き、せめて手数料と送料分を回収しようと「2万6000円」に設定すると、チケットはすぐに購入されます。

しかし数日後、アプリ運営会社から突然「アカウントの利用を制限し、売上金口座を凍結しました」と通知が入ります。悪気のない「余りチケット」の譲渡が、なぜ問題になってしまったのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。

■転売目的でない「余り」でも違法になるリスク

ー転売目的ではない「余りチケット」の売却も違法ですか

転売目的ではない「余ったチケット」であっても、売り方によっては違法となる可能性があります。「チケット不正転売禁止法」では、主催者の同意なく、興行主が提示する販売価格を超える価格で、かつ「営利の目的」で転売をおこなうことを禁止しています。

急病などで行けなくなったチケットを定価以下で他人に譲る行為は違法ではありません。しかし、本来は不要になったチケットであるにもかかわらず、購入時の価格を上回る価格で取引をしてしまうと、「営利目的の転売」とみなされる可能性が生じます。

ー手数料や送料を上乗せした価格設定は不正転売になりますか?

不正転売とみなされる可能性があります。法律上、禁止されているのは「販売価格(定価)を超える価格」での転売です。Aさんは「フリマアプリの手数料や送料の実費を回収したかっただけ」と主張していますが、購入者が支払う金額が定価(2万4000円)を超えて2万6000円になっている以上、客観的には「定価超えの転売」となります。

たとえ実費の回収という名目であっても、定価に上乗せして出品する行為は、法的な言い訳としては一切通用しません。購入を検討する際は、手数料や送料をのせた総額が定価を超えないように価格を設定することが絶対のルールです。

ー公式リセール以外でのチケット譲渡に潜むリスクとは?

現在、多くのフリマアプリやSNSは、警察庁などの指導のもとでチケットの不正転売を厳しく監視しています。不審な出品が検知されると、アカウントや売上金口座が即座に凍結され、警察への個人情報提供(身元照会)がおこなわれます。

また、近年は宝塚歌劇の観劇チケット(定価9500円)を7倍以上の7万円で100回以上転売した女性が逮捕されるなど、取り締まりが強化されています。非公式ルートでの取引は、自らが犯罪の片棒を担ぐことになるため絶対に避けるべきです。

ー悪気のない1度きりの個人転売でも逮捕はあり得ますか?

法を犯している以上、「悪気はなかった」「1回だけだから」という主観的な言い訳は、警察の捜査において通用しません。

チケット不正転売禁止法違反の罰則は「1年以下の拘禁刑、もしくは100万円以下の罰金、またはその両方」と非常に重いものです。行けなくなったチケットは、主催者が用意している「公式リセールサービス」を利用し、必ず定価以下で正しく安全に処理する習慣を身につけてください。

◆北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)