木山裕策さん
木山裕策さん

 歌手デビューしてから早18年。デビュー当時から「病気を乗り越えた子沢山(だくさん)の苦労人」というイメージが強く、いまだに「大変な人生でしたね!」と言われることも多いが、壮絶な人生を歩んできた自覚など全くない。そんな我(わ)が人生を客観的に振り返ってみたい。

 昭和43(1968)年大阪生まれの57歳。穏やかな性格で、歌が大好きな子どもだった。大学卒業後は脚本家を目指して上京するが、夢は叶(かな)わず4年で挫折。27歳で結婚して長男が誕生すると、夢を追う生活を諦め28歳で初めて会社員に。と、まあここまではよくある若者の「夢と挫折の物語」。

 生きる目的を「夢」から「金」に変換して会社員になった僕は、今となっては時代遅れの「企業戦士」として邁進(まいしん)し、35歳で課長に昇進すると夢のマイホームを購入。なんか調子いいでしょ? でも、人生なんて思い通りにいかないもの。

 36歳の時に人間ドックで「甲状腺がん」が見つかり、医師から「手術後に声を失うかもしれない」と宣告された時、「歌を歌いたい!」という衝動が心の底から湧き上がってきて「4人の子持ちの会社員が歌手になる」という途方もない夢への挑戦を開始する。

 38歳で出演したオーディション番組で「home」という楽曲に出会い、翌年メジャーデビュー。会社員と歌手の二足の草鞋(わらじ)生活を続け、満を持して50歳で歌手として独立するも、時を同じくしてコロナの世界的流行が始まる。オーマイゴッド! なんてこった。

 それからは無我夢中で走り続けてきた僕。現在はコンサートや講演、TV出演等、今が一番楽しいと思える多忙な毎日を送っている。

 こんな風に振り返ってみると、まあ「凄(すさ)まじくも、素晴らしき哉(かな)、我が人生!」といったところか。

【きやま・ゆうさく】1968年大阪市生まれ。大阪外国語大(現大阪大)卒。歌手。リクルート在職中にデビューし、NHK紅白歌合戦に出場。バラエティー番組「千鳥の鬼レンチャン」にも出演。