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カフェギャラリーを開いた岩元清美さん(右)と祐磨さん(中央)、作品展示に協力するイラストレーター三原敏秀さん=洲本市下加茂2
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カフェギャラリーを開いた岩元清美さん(右)と祐磨さん(中央)、作品展示に協力するイラストレーター三原敏秀さん=洲本市下加茂2

 兵庫県洲本市下加茂2の住宅街に今年5月、民家の1階を改修した「カフェギャラリー遊(ゆう)」がオープンした。店主は、この家に住む岩元清美さん(60)。ダウン症の長男祐磨さん(22)と二人三脚で切り盛りする。常設展示は、書道で才を発揮する祐磨さんの作品。「障害者が集い、個性を発信する拠点」を目指す。

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 清美さんは1999年に祐磨さんを授かった。「病院通いが続き、不安が大きかった。友人や先生、多くの出会いに助けられた」と振り返る。「地域で育てたい」と小中学校は地元の学校を選んだ。

 祐磨さんと書道との出会いは小学4年。クラスメートと「ジャンボ習字」に挑戦した。「字や絵を書くのは好きだったが、汚れるのは嫌い。でも、友達と手に絵の具を付けて手型を押したら、抵抗なくできた」。筆を持つと機嫌が良かったため、島内の書道教室に通って作品展にも出品した。

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 姫路市の姫路聴覚特別支援学校2年の時、「県障害者芸術・文化祭」の公募展で審査員特別賞を受賞した。作品は「寿」。オナガドリの羽でできた柔らかな筆を巧みに使った。翌年の同展では「慈」で県議会議長賞に。ぬくもりある書体が評価された。

 2021年、健常者が目標とする洲本市美術展(市展)で、有望作家に贈られる「大歳賞」を受賞。荒々しくも、どこか優しい「風神雷神」を情緒豊かに書き切った。「書遊家」を名乗り、初の個展を開くと交友の輪が広がった。

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 約20年前に建てた自宅の1階部分は倉庫だった。当初から、祐磨さんがいずれ働く場所になるかもしれないと想像し、「自由に使えるスペースを」と考えた設計だった。給食センター職員や介護ヘルパーをしながら育てた清美さんは、祐磨さんの高校卒業、成人を経て開業を決めた。

 祐磨さんは開店前の準備や洗い物を担う。笑顔を振りまいて握手を求める接客が利用者に癒やしをもたらす。ギャラリーには、個展で出会った淡路市志筑のイラストレーター三原敏秀さん(61)との共作もある。今後、さまざまな作家の作品を展示する計画という。

 「障害がある子どもを持つ親にとって将来の不安は避けて通れない」と清美さん。「地域で支え合いながら暮らせる空間にし、障害者の就労を支援できる店になれば」と未来を描く。(内田世紀)

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