淡路

ワタシ発、今・・・(29)物産店 島の「おいしい」顔でPR

2022/10/19 05:30

 神戸淡路鳴門自動車道・津名一宮インターチェンジ近くの土産物販売施設「産直淡路島 赤い屋根」(兵庫県淡路市中田)で、眼鏡姿の中年コンビ「島村兄弟」がドレッシングを口に流し込むパネルに目が留まる。「飲めるほどうまい」と攻めのキャッチコピー。他にも、そこかしこにパネルがある。満面の笑みや、口をすぼめた顔…。芸人さながら多彩な表情を見せている。

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 コンビは、ケンイチこと角村憲一さん(61)と、実の弟のノリアキこと憲昭さん(57)。赤い屋根に出店する地元事業者「島村」の社長と社員で、島村兄弟を屋号にしている。

 「始めて10年。最初は、自分大好きな人間と思われるのではないかと、恥ずかしくて。面白がってもらえたらうれしいなと、続けています」。憲一さんが控えめな口調で語る。

 看板商品の一つが自社開発の「黒酢玉ねぎドレッシング」だ。細かく刻んだタマネギと熟成した黒酢を合わせている。「購入したお客さんから、そのまま飲んでもおいしいと感想があり、コピーに使わせていただきました」と、自信をのぞかせる。

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 島村は1998年設立。もともと海産物の卸をしていた父と憲昭さんが、小売業に転身した。東京の商社で働いていた憲一さんも、程なく帰郷し、入社した。

 憲一さんは商社時代に全国を回り、各地の名産品を食べた。淡路島内の食材をあらためて口にしておいしさを再認識し、感動すら覚えたという。「日本中の人に知ってもらいたい」と、野菜や果物、調味料、菓子類など約200種類を店に並べる。

 兄弟そろって露出するブランディング戦略は、デザイナーの勧めだった。知名度アップのためと、腹をくくって撮影した。

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 店内にパネルを並べ、ホームページにも写真を掲載すると、口コミで広がり、観光客が訪れた。記念撮影を求められれば応じた。「次もここで買いたいと思ってもらえる仕掛けをしたい」との思いが強まった。

 試食の強化を計画している。数百円の入場料で白ご飯を出し、島の産品を味見して回ってもらう内容だ。「買い物の楽しみに加えてエンターテインメント性がある空間にし、ファンを増やしたい」と期待している。(中村有沙)

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