神戸市北区の路上で2010年10月、高校2年だった堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件で、殺人罪で起訴された当時17歳の男(30)の弁護側が、今月7日に予定される裁判員裁判で、男は精神疾患による「心神耗弱」の状態だったとして刑の減軽を訴える方針を固めたことが2日、関係者への取材で分かった。
関係者によると、被告の男は堤さんに対する殺意を否認する主張もするという。刑法39条は、善悪の判断能力などが著しく低下した状態である心神耗弱の場合、刑事責任能力が限定的として刑を軽くすべきとしている。検察関係者によると、検察側は2度の精神鑑定の結果から、男の刑事責任能力を問えると判断したといい、公判は、被告の刑事責任能力の程度と殺意の有無が争点になるとみられる。
起訴状によると、男は10年10月4日午後10時45分ごろ、神戸市北区筑紫が丘4の路上で、堤さんを折り畳み式ナイフ(刃渡り約8センチ)で突き刺すなどして殺害したとされる。
堤さんは知人の女子生徒と歩道で話しているところを突然襲われ、刺した男は逃走。兵庫県警は約11年後の21年8月4日、愛知県豊山町に住んでいた元少年の男を殺人容疑で逮捕し、逮捕当時は県警の調べに容疑を認めていた。
神戸地検は起訴前に実施した精神鑑定の結果などを踏まえ、刑事責任能力が問えると判断。一方、弁護側は事件当時の刑事責任能力に疑いがあるとして、再度の精神鑑定を求め、神戸地裁が2回目の鑑定を認めていた。
関係者によると、弁護側は精神鑑定の結果などを踏まえた上で、被告の男が当時心神耗弱の状態だったと判断したとみられ、堤さんをナイフで刺した行為も殺意がなかったと主張する方針という。