神戸地裁=神戸市中央区橘通2
神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 神戸市北区の路上で高校2年の堤将太さん=当時(16)=を刺殺したとして、殺人罪で起訴された当時17歳の男(30)に対する裁判員裁判の第2回公判が8日、神戸地裁(丸田顕裁判長)であった。被告人質問で男は刺した際の感情について「『痛い』と聞いても何も思わなかった」と語った一方、堤さんには「これから経験するはずだった人生の何もかもを奪ってしまった」と謝罪を繰り返した。

 前日の初公判で男は殺意を否認し、弁護側は事件当時の男は「心神耗弱」だったと主張。8日も前日と同じく、濃紺のスーツ姿だった男の表情は終始乏しく、質問には淡々と答えた。

 検察側の冒頭陳述では、男は「同年代の不良のように見える男性」を憎み、事件前には面識のない若い男性の首を絞めたとされる。

 男は弁護側の質問に「(堤さんが)首を絞めた男性と見た目が似ていた」と説明。不良グループの一員と思い、事件に及んだとした。うつぶせに倒れた堤さんの背中をもう一度刺したことも明らかにした。自首しなかった理由は「18、19歳の時は悪いことをしたと思っておらず、その後は記憶から薄れた」と話した。

 堤さんの父敏さん(64)が被害者参加制度を利用して質問に立つと、男の言い回しは慎重に。「うつぶせに倒れた人を刺しても死ぬと考えなかったのか」との質問には裁判員の方を見ながら「思わなかった」。逮捕された時の気持ちは「(最初は)身に覚えがなく、少しずつ思い出した」。

 「どう償うのか」。そう聞かれた時は落ち着きをなくし、耳を赤くさせる場面も。「裁判が終わったら、まず何をするのか」との問いには、30秒ほど考えて答えは出なかった。

 敏さんは尋ねた。「私たち(遺族)を見て、どう思いますか」。男は答えた。「生きていて申し訳ありませんと思います」

 起訴状によると、被告の男は2010年10月4日夜、同市北区筑紫が丘4の路上で、近くに住んでいた堤さんをナイフ(刃渡り約8センチ)で複数回突き刺すなどし、殺害したとされる。