「三つのタイトルを獲得する地点にまでたどりついたのは、今の自分にしては上出来」。第49期天元戦5番勝負(神戸新聞社主催)を3勝1敗で制し、一力遼新天元(26)=棋聖、本因坊=が3期ぶりの天元復位を果たした。自身初の三冠保持も達成し、対局後の取材で静かに喜びを語った。
■内容の濃いシリーズ
洲本市で打たれた第4局(淡路共正陸運など協賛)は、黒番の関航太郎前天元(22)が黒31(6十三)と切り違った局面から左辺で戦いが始まった。関は黒49(9八)から中央の白一団に狙いを定めたが一力は白64(12十四)から逃げ出し、優位に立つ。しかし黒85(7四)、87(6六)などで黒も安定し、いったんは形勢不明に。その後、白100(9五)からコウ争いになったが、一力は白130(16十一)と継いで地合いで差をつけ、白148(12十)で黒を分断したことによって勝利を決定づけた。
解説の村松大樹七段(34)は「一力さんが優勢な時間が多かったが、形勢不明な局面が何度も訪れる大熱戦だった」と一局を振り返り、立会人の後藤俊午九段(57)=神戸市東灘区=は「一力さんは2局目で逆転勝ちして流れをつかんだようだ。内容の濃い対局が続くシリーズだった」と5番勝負を総括した。(井原尚基、小林伸哉)
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