棋士編入試験5番勝負第5局に臨んだ西山朋佳女流三冠=22日午前、大阪府高槻市、関西将棋会館(日本将棋連盟提供)
棋士編入試験5番勝負第5局に臨んだ西山朋佳女流三冠=22日午前、大阪府高槻市、関西将棋会館(日本将棋連盟提供)

 将棋で女性初となるプロの「棋士」を目指し、西山朋佳女流三冠(29)=白玲、女王、女流王将=が22日、大阪府高槻市の関西将棋会館で棋士編入試験5番勝負第5局に臨んだが、試験官で先手番の柵木(ませぎ)幹太四段(26)に敗れた。夢の実現にあと一歩まで迫ったが、通算成績2勝3敗で不合格となった。

 将棋のプロは、性別を問わない「棋士」と女性だけの「女流棋士」がおり、制度が異なる。棋士になるには、棋士養成機関「奨励会」最高位の三段リーグで好成績を残すか、棋士編入試験での合格が条件となる。日本将棋連盟は昨年に創立100年を迎えたが、これまでに女性の「棋士」は1人も誕生していない。

 奨励会には全国から才気あふれる強豪が集まるだけでなく、在籍の年齢制限がある。これまで三段まで昇段できた女性は、福間香奈女流五冠(32)=清麗、女流王座、女流名人、女流王位、倉敷藤花=と西山、中七海女流三段(26)=神戸市出身、在住=の3人しかいない(いずれも退会)。

 編入試験は、新人棋士との5番勝負で月に1局ずつ対局して、3勝すれば合格となる仕組み。現行制度の編入試験で、女性が受験するのは2022年に不合格となった福間に続いて2人目だった。

 西山は昨年7月、直近の公式戦で「10勝以上かつ勝率6割5分以上」という受験基準を満たした。9月の第1局で高橋佑二郎四段(25)に勝った後、10月の第2局で山川泰熙四段(26)に敗れ、11月の第3局で上野裕寿四段(21)=加古川市出身=に負け、12月の第4局では宮嶋健太四段(25)を破っていた。

 現行制度で棋士編入試験を受けるのは男女合わせて5人目だが、西山のように試験で2勝2敗となって第5局までもつれこんだのは初めて。この日、西山はプレッシャーのかかる大一番で、奨励会三段リーグ時代に通算成績0勝5敗と苦戦してきた柵木に挑んだが、及ばなかった。

 不合格が決まった西山女流三冠は「充実した期間だった」と笑顔も見せた。「受験資格を再び得た場合、挑戦するか」と問われると「今日のことだけ考えてきた。今後のことはいったん整理して考えたい」と述べた。

 西山は「豪腕」とも呼ばれる力強い棋風が持ち味。大阪府大阪狭山市出身。伊藤博文七段門下。10年、6級で奨励会入会。20年春、プロ入りの最終関門となる奨励会の三段リーグで3位となる好成績を残して、女性初の棋士へあと一歩まで迫った経験を持つ。21年4月に女流棋士に転向し、女流三段となった。23年、女流五段に昇段。通算タイトル獲得数は18期を誇り、「永世女王」「クイーン王将」の永世称号も手にしている。(小林伸哉)