地すべりが起きた斜面で開花したタイム・ロンギカウリス。長年植えられたシバザクラもちらほら=西宮市甲山町
地すべりが起きた斜面で開花したタイム・ロンギカウリス。長年植えられたシバザクラもちらほら=西宮市甲山町

 一戸建ての家が立ち並ぶ斜面の一画に、ピンク色の小さな花が密集して咲き広がる。ここは1995年の阪神・淡路大震災で地すべりが起きた場所。その土砂で家屋13戸が押しつぶされ、34人が犠牲になった。

 被害のあった西宮市仁川百合野地区には、慰霊碑のほか、土砂災害の仕組みを伝える資料館もできた。地元住民らによる「ゆりの会」は約20年前から、慰霊の思いも込め、この斜面の緑化に取り組んでいる。

 花はシソ科のタイム・ロンギカウリスで、同会が6千株余りを丹精した。見ごろを迎え、メンバーの岩城峯子さん(81)は「震災のつらい記憶はあるが、花を育てることで癒やされ、命の大切さを感じている」と話した。(斎藤雅志)