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居留地時代の建物として神戸で唯一現存する「十五番館」=神戸市中央区浪花町
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居留地時代の建物として神戸で唯一現存する「十五番館」=神戸市中央区浪花町
コロニアル様式と呼ばれる建物内部のバルコニー=神戸市中央区浪花町
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コロニアル様式と呼ばれる建物内部のバルコニー=神戸市中央区浪花町

 一見洋風なのに、なぜか和風の瓦屋根。近代的な高層ビルに囲まれ、こぢんまりと2階建ての館が立つ。

 居留地時代の建物として神戸で唯一残る「十五番館」(神戸市中央区浪花町)。1989年に国の重要文化財に指定された。

 「居留地の建物がどのようなものだったかを知る上で、史料的価値が非常に大きい」と話すのは、神戸大学特命講師で1級建築士の小代薫さんだ。

 最初に建てられた十五番館はフランス人が落札したが、1878年に火事で焼失。間もなく再建され、米国領事館となった。1階が事務所で、2階が住居。現在はないが、敷地内に使用人の建物もあったという。

 特徴的なのは瓦屋根とバルコニー。小代さんによると、欧米では見られない建築様式だという。

 まずは瓦屋根。こちらは素人でも和風だと分かる。

 「設計段階までは欧米人が担ったと思われます。でも、大工など職人を連れて来る余裕はなく、それ以降は日本人に任せたのではないでしょうか」

 互いによく分からない言葉を話す者同士、どのようにコミュニケーションを取って建物を完成させたのだろうか。さらに興味深いのはバルコニーだ。

 「欧米の住宅にバルコニーはありません。これは、列強の人々が東アジアに進出していく過程でインドの暑さなどを経験し、新たに生み出した様式です」

 十五番館は、日本も同様に暑いだろうと考え、造られた建物のようだ。一方で「日本は意外と寒かった」といった欧米人の回顧録もあるといい、少し当てが外れたのかもしれない。

 横浜では「地下に埋もれたまま」という居留地時代だが、神戸ではかつての区画内に素晴らしい景観が残る。中でも十五番館は開港当時の「証人」として、今なお多くの人に利用されている。空襲や震災を乗り越えた同館は神戸市民の誇りだ。(安福直剛)

=随時掲載=

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