県議会の全議員から「不信任」を突き付けられ、「失職」を選び、出直し選挙への出馬を表明した兵庫県の斎藤元彦知事。総務官僚から戦後最年少の43歳で兵庫県知事に転身し、文書問題をきっかけに県議会との対立を深めるまでの歩みを会見やインタビューからたどる。
【知事告発文書問題特集ページ「揺れる県政」】こちら
■2021年3月、県知事選の立候補表明会見で
「元彦は金井元彦(元知事)から名付けられた。生まれながらにして知事になるという、ある意味天命としてあったのかなと思う」
■21年4月、知事選に向け姫路市議会の会派を訪れ
「新しいリーダーが変革の時代を担うべきで、謙虚さを忘れず進んでいきたい」
■21年6月、知事選立候補予定者の公開討論会で
「これまで県内500カ所以上で、県民のみなさんと直接対話を繰り返してきました。その声を少しでも一つでも、反映させることが、私が目指したい県政です。政治は一体、誰のものなのか。すべて県民のためです。私は兵庫を躍動させるため、県民ボトムアップ型の県政をしていきたいと考えています」
「県には29億円しか貯金がありません。財政調整基金です。全国の都道府県でも少なく、人口500万人以上では最も少ない。コロナ対応、未来への投資のために増やすことが不可欠。(知事に就任すれば)直後から全事業を見直し、来年の当初予算編成に向けて議論する。知事の給与、退職金もカットします」
■21年7月、県知事選の候補者インタビューで「座右の銘」の質問に
「祖父から贈られた言葉『雲中雲を見ず』。自分が見えず、傲慢(ごうまん)や偉そうにならないよう、常に胸に刻む」
■21年7月、初当選を決め、選挙事務所で「当選の受け止め」を尋ねられ
「県民からの大きな支援に感謝したい。県政を継承するのではなく、若い世代で刷新し、新しい兵庫県をつくりたい。誰も諦めさせない、誰も取り残さない、大きな県政を実現したい。そんな思いに、県民からの理解、支持をいただいた」
■21年7月、知事選当選から一夜明けた会見で「知事公用車センチュリー」について尋ねられ
「コロナで県民の皆さんが大変な時に43歳の私が乗るのは分不相応。機能性のあるワンボックスカーに変えたい」
■21年8月、県庁で知事就任式に臨み
「従来のトップダウン型ではなくボトムアップ型の県政をする。全ての責任は私が取るので、失敗を恐れず、前例主義にとらわれず挑戦してほしい」
■21年9月、選挙戦で女性副知事の登用を打ち出していたが、片山安孝氏を起用する方針を明らかにして
「コロナ禍で厳しい産業や経済を前に進めるため、今回は県内の状況を熟知している人がふさわしいと判断した」
■21年9月、初の議場発言で
「企業や団体などと連携を深めるオープンな県政、都市部や農山村など多様な地域に暮らす全ての県民に温かい兵庫を目指す」
■21年11月、ワーケーション知事室の発表で
「新しい働き方を通じ、県政に反映すべき地域の課題や実情を把握する。県の魅力を掘り起こし、ワーケーションのリーディング(先進)県として発信することで、県内への人の流れをつくりたい」
■21年12月、海洋冒険家堀江謙一さんの激励に駆け付け
「県政運営も時には冒険しつつ、安全運転を心掛けたい」
■22年1月、幹部職員を前に初めての年頭あいさつで
「ベイエリアの活性化や困窮者の支援策などが大事。前例にとらわれない創意工夫と失敗を恐れないチャレンジ、県民目線を忘れない県政運営に取り組み、新しい県政を進めたい」
■22年3月、県職員採用試験に「特別枠」を新設することを発表した際に
「新しい発想や柔軟性、失敗を恐れず挑戦する行動力を備えた人材を確保するのが大事。それぞれの持ち味を発揮していただければ、どんなタイプでも受け入れたい」
■22月4月、新規採用職員の辞令交付式の訓示で
「公務員の目的は県民一人一人の悩みや不安に寄り添い、社会課題を解決すること。対話と現場主義を徹底してほしい」
■22年4月、樹木の伐採を巡り「切り過ぎだ」との指摘が出ている県立明石公園の視察で
「石垣保全のために議論を積み重ねてきたが、情報発信や地元との合意形成に反省点があった」
■22年4月、開学2年目を迎えた芸術文化観光専門職大学を視察し、4年間の過ごし方に関する学生の質問に対し
「いいこともあればうまくいかないこともある。そういう時だからこそ、自分を見つめ直して決して諦めないこと。夢は切り替えてもいい。いろんな道が必ず見えてくる」
■22年5月、「ひょうごスタートアップアカデミー」の視察で、大学を留年したことが国家公務員を目指すきっかけになった自身の体験を高校生に披露し
「人生には無数の選択肢がある。プログラムには難しい用語が登場するが、果敢にチャレンジしてほしい」
■22年5月、県内の酪農家らの県産牛乳のPRを受け、牛乳計5杯を飲んだ後
「私も兵庫の牛乳が大好き。できる限りの支援を尽くし、いろんな形の消費拡大を図りたい」
■22年8月、就任1年に合わせたインタビューで、改革方針に対する議会や市町の反発について
「想定より大きな反発だった。20年ぶりに交代した知事の下で心配や不安が強かったと受け止めている。ただ、これからも行財政改革の継続が必要。安心していただけるよう、議会や市町、経済界とのコミュニケーションを図っていく」
■22年9月、丹波市のワーケーション知事室で栗の木のプレートを贈られ
「木は兵庫県の大事な財産。例えば県庁の記者会見場で木製の机と椅子を使うなど、PR方法を考えていきたい」
■22年10月、泉房穂明石市長の退任表明を受け
「政治家の出処進退は自身で考えること。『ハラスメント行為はいかなる状況でもあってはならない』と判断したのだろう」「議会で認められないからといって専決処分で進めれば、対立を継続させる。少なくとも兵庫県ではそうした手法は使わない」
■22年10月、県ホームページでアイドルグループの出演するテレビ番組をやゆするような発言をし、動画の公開を中止したことを受け
「不用意な発言で関係者やファンの皆さまに不快な気持ちを抱かせたことをおわびします」
■23年5月、県庁舎の敷地内を全面禁煙にしたことについて、会見で、
「就任後から職員が勤務時間内にベランダで喫煙することに違和感があった。副流煙の問題もある。快適な職場環境や健康的な社会づくりに向け、禁煙の流れを進めたい」
■23年7月、定例知事会見で記者に配る資料の「ペーパーレス化」の発表で
「県庁としてデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めることが、県全体のDX化に不可欠。審議会や議会も含め、ペーパーレスを広げたい」
■23年7月、県内の地域ごとに県民と直接対話する「躍動カフェ」で
「今すぐにでも、県政に取り入れたい意見ばかりだった。話を直接聞くことで、課題も掘り起こせた」
■23年8月、就任2年に合わせたインタビューで、2年間の自己評価を尋ねられ
「新型コロナ対策の比重が大きかったが、対応はきちんとできたかと思う。現場と対話主義を掲げて各地で意見交換し、課題解決につなげた。採点するなら1年目は60~70点と答えたが、今は70~75点」
■23年8月、県立2大学について県内在住者を無償にすると発表し
「県内の学生が不安なく教育を受け、安心して将来設計を描けるよう、一刻も早く無償化を打ち出すことが大事だと考えた」
■23年9月、兵庫県の行財政運営について「県政改革審議会」で外郭団体の改革について求められた際
「これまで切り込めていなかった部分もある。将来に積み残さないよう、残りの任期2年で方向性を出したい」
■23年9月、プロ野球阪神タイガースのパレードを神戸・三宮で行う考えを明らかにし、
「待ちに待った『アレ』を実現していただき、本当にうれしい。阪神は基本的に兵庫県の球団だ」
■23年9月、県購入の山林が未造成になっている問題で
「当初の経営見通しが厳しくなっていることを、より早いタイミングで県民や議会に明示すべきだった。課題を将来に積み残すことなく、残り2年の任期で方向性を定める」
■23年10月、県庁カフェで、福島県産食材のランチの試食で
「両県産の水産物を使ったメニューはいいアイデア。甘辛くて癖になりそう」
■23年11月、プロ野球阪神、オリックスの優勝パレードの開催事業費を募るクラウドファンディングについて
「5億円の目標達成に向けて正直なところ苦戦している。いろんな所でPRし、多くの方に協力をお願いしたい」
■23年12月、分収造林事業の実質破綻問題を受け、
「当時は機構の財務状況が安定し(同事業の)長期収支見込みも黒字だったため、基金の安全・確実な運用の一環との認識だった」「リスクを予見し、議会に丁寧な説明を行わなかったことは大いに反省すべきだと考える」
■24年2月、段階的な県民無償化を予定する県立大で一般入試の志願者数が増えたことについて
「無償化で志願者が増えたと受け止めている。事業の完成に向けて努力したい」
■24年3月、西播磨県民局長の解任を発表した会見で
「文書には事実無根の内容が多々含まれ、看過できない。業務時間中にうそ八百を流す行為は絶対に許されず、組織を立て直す意味でも綱紀粛正が必要だと判断した」