睡眠について語る神戸大人間発達環境学研究科の古谷真樹准教授=神戸市灘区鶴甲3、神戸大

睡眠について語る神戸大人間発達環境学研究科の古谷真樹准教授=神戸市灘区鶴甲3、神戸大

 なかなか寝付けない。眠りについても夜中に何度も起きる。眠りが浅く、疲れが残ってしまう。こういった睡眠についての悩みを抱えている人は少なくないだろう。どうすれば「質の良い睡眠」を取り、快適な生活を送ることができるのか。長年、睡眠について研究している神戸大大学院人間発達環境学研究科の古谷真樹准教授に聞いた。(斉藤正志)

 古谷准教授に質問したのは次の内容になる。

 ・寝付きを良くするためにできることは。

 ・夜中に何度も起きること(中途覚醒)を防ぐためにはどうすればいいのか。

 ・熟睡感が得られないこと(熟眠困難)への対策は。

 ほかにも

 ・睡眠不足は病気になりやすくなるのか。

 ・睡眠不足は太るのか。

 ・昼寝はしてもいいのか。

 ・睡眠が効果的な時間帯「ゴールデンタイム」はあるのか。

 ・ヒツジを数えることに効果はあるのか。

 なども聞いた。

ベッドで眠る女性(maru54/stock.adobe.com)

 ■寝付きを良くするために

 古谷准教授によると、睡眠を促すホルモンの分泌は、加齢とともに減少する。これに伴い、睡眠の質も悪くなる傾向にある。

 睡眠の役割は主に疲労回復と体のメンテナンス。だから、体や脳が疲れていないと眠りにくくなる。

 寝付きをよくするためには昼間にジョギングなどの運動をすればいいが、仕事や体力的な問題などでできない人もいるだろう。

 古谷准教授は「ただ歩くにしても、ゆっくり歩くのではなく、ちょっと速く歩いたり、少し長い時間を歩いたりするなど、強度を上げると疲れやすくなる」と話す。

 入念にストレッチするのも方法の一つ。高齢者なら、筋肉を曲げ伸ばしする柔軟体操をしっかりするだけで、適度な疲労感が得られる。

 一方、布団に入る直前にハードな活動をすると、逆に眠りを妨げるので、ストレッチなども時間に余裕を持って取り組むのがポイントという。

 ■「寝付けに酒」の効果は?

 食事も大切なポイント。中途覚醒、熟眠困難への対策にもなる。

 夕食はどれくらいの量を、いつ取ればいいのか。

 古谷准教授は「おなか一杯、食べると体が消化しようと頑張ってしまい、眠りにくくなる。眠るためには腹八分目が大切」と指摘する。

 就寝直前の食事は控える。2時間以上前に取るのが良いという。

 これを食べたら眠りやすいという物は特にないが、飲酒や喫煙には注意が必要。「眠れないから酒を飲む」のは間違いという。

 アルコール、ニコチンには覚醒作用があるため、寝付きが悪くなり、中途覚醒や熟眠困難につながってしまう。

 古谷准教授は「アルコールには覚醒作用のほかに利尿作用もあり、寝入ってからトイレで起きやすくなってしまう。たばこを吸うとリラックスした気分になると感じるかもしれないが、脳が覚醒状態になる」と説明する。

 ただ、飲酒、喫煙が一切駄目なのではなく、就寝まで一定の時間を空けて、適量をたしなむことが大切という。

質の良い睡眠<2>どうしても眠れないときは… ヒツジを数えるのは効果的?

質の良い睡眠<3>昼寝前にコーヒーの勧め 「寝だめ」はできるのか

質の良い睡眠<4>最も効果的なことは実はシンプル 睡眠不足と認知症の関係

古谷真樹(ふるたに・まき)】岡山県倉敷市出身。広島国際大大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了。2013年に神戸大大学院人間発達環境学研究科の講師になり、16年から准教授。専門は睡眠心理学。研究の傍ら、小中学校や地域で睡眠をテーマにした講座の講師も務めている。