東京電力福島第1原発事故で福島、宮城県から兵庫県へ避難した30世帯78人が国と東電に計約6億7600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁(龍見昇裁判長)は21日、東電に対し一部原告に計2424万円の支払いを命じた。先行訴訟の最高裁判決(2022年6月)と同様、国の責任は認めなかった。
判決で龍見裁判長は、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測の長期評価は、すぐに津波対策を義務付けるほどの知見とは認められないと指摘。国が長期評価を前提に、東電に適切な措置を指示したとしても、「津波で大量の海水が(原発内に)浸入することは避けられなかった可能性が高い」として原告の訴えを退けた。
国の責任を否定する判決を出した最高裁の判断に沿った内容となった。
一方、東電に対しては、過失の有無にかかわらず、賠償責任を負うと規定する「原子力損害賠償法」に基づき、責任を認めた。居住地域の放射線量や原発からの距離などを総合的に考慮し、事故と避難との因果関係を判断。東電から既に支払われた賠償金などを差し引き、22世帯50人に2万2千~319万3520円の支払いを命じた。
因果関係が認められなかったり、認定された支払額相当を既に受け取ったりした8世帯28人については、請求を棄却した。
原告らは原発事故から1年半後の13年9月に提訴。平穏な生活を奪われ、放射能汚染による健康悪化の恐れ、経済的困窮などの被害を受けたとして、国と東電に計約6億7600万円(1人当たり150万~1500万円)の損害賠償を求めていた。
兵庫を含め、同種訴訟は全国で約30件に及ぶ。先行訴訟では、国の責任の有無は高裁段階で結論が分かれ、最高裁は22年6月、国の賠償責任を認めない判決を出し、統一判断を提示。その後、仙台高裁や福島地裁などの4訴訟の判決は、国の責任を否定した。
判決後、原告弁護団長の古殿宣敬弁護士は「最高裁判決より後退したひどい判決だ。二重三重に国の責任はないとしている」と訴え、控訴する方針を示した。


























