女性(76)は神戸から遠く離れた町で一人、暮らしている。夫は5年前に亡くなった。
今年の正月。能登半島地震を伝えるニュースが目に飛び込んできた。涙があふれて、止まらなくなった。家屋が倒壊している。あの日と同じ光景。
「ドーンと胸にきて、29年前のことが心によみがえりました。もう泣けて、泣けて…」
この3カ月半はずっとそんな状態だという女性は、目をはらしていた。
女性は、阪神・淡路大震災で21歳の長男を失った。強いショックや恐怖心で発症する心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたのは、息子の死から7年後のことだ。
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