週末、能登半島を無情の豪雨が襲った。被害の全容はまだ分からない。記者が取材した集落も再び被災したようだ。今はただ住民の無事を祈っている。
元日の能登半島地震でも石川県では集落の孤立が相次いだ。輪島市滝又町もその一つ。過疎が進む町には、正月まで23世帯が暮らしていた。8月、住民に話を聞いた。
ヘリコプターで全員が救出されるまでの11日間、住民は農機具小屋や車中で夜を明かした。地域のまとめ役、坂本賢治さん(72)によると、今は自身も含め20世帯が町外に移っている。
坂本さんは案じていた。「限界集落化が進み、助け合いは難しい。村は維持できないだろう」。集団移転もよぎったが、持ち出すのは控えた。「どうしても残りたいという声がある。住む権利は奪えない」
電気は復旧し、山水もある。だが、地震の爪痕は生々しい。今回のような豪雨に見舞われれば、再び孤立するリスクが高い。
でも、「ここがいい」。集落に残ることを決めた中竜夫さん(72)は言った。理由は多く語らなかった。