神戸・新開地の「春陽軒」は今年で創業100年。ホームページも「創業大正十四年、豚まん一筋!」と誇らしげだ。ところが、3代目の山本豪さん(59)に水を向けると「本当はいつか分からない」。なるほど、過去の記事には1923(大正12)年説や24年説もある。ちなみに昔は豚まん専門でなく、大衆中華の大店だ。老舗の味もさりながら、戦災、震災を乗り越えた波乱の歩みに迫りたい。(田中真治)
■屋台から町中華の大店に
創業者の山本清市氏は、豪さんの祖父。「北海道から出てきて屋台のラーメンを始めた」と伝え聞くが、来神の時期や経緯は「全然分からない」という。
気になる広告が神戸新聞にある。23年4月30日付の「開店御披露 春陽軒」。場所は湊川神社近くの多聞通で、報徳銀行地下の公衆食堂だ。当時の商工録などによると店主は「平田常次郎」だが、豪さんに尋ねると「聞いたことがない」。どうやら屋号を受け継いだわけでもないらしい。