会合に参加した(左から)高森順子「阪神大震災を記録しつづける会」事務局長、中野元太京都大防災研究所准教授、飛田敦子コミュニティ・サポートセンター神戸事務局長=神戸新聞社(撮影・小林由佳
会合に参加した(左から)高森順子「阪神大震災を記録しつづける会」事務局長、中野元太京都大防災研究所准教授、飛田敦子コミュニティ・サポートセンター神戸事務局長=神戸新聞社(撮影・小林由佳

 阪神・淡路大震災の発生から30年を経て、人口減などで基盤が揺らぐ社会に震災の教訓をどう生かすかを考えようと神戸新聞社が設置した「1・17未来会議」の第3回会合が、神戸市中央区の本社であった。若手研究者や市民活動の担い手らが、経験を継承する意義や防災教育の在り方などについて語り合った。

 1日に開いた会合に参加したのは、阪神大震災を記録しつづける会事務局長の高森順子さん、京都大防災研究所准教授の中野元太さん、認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸事務局長の飛田敦子さん。進行は勝沼直子・神戸新聞論説委員長が務めた。

 初参加となった中野さんは、防災教育の役割について「30年たつと震災体験者とそうでない人との二極化が進む。若い世代も教訓が街でどう役立っているか、息づいているかを考え、自分たちの言葉で語ることはできるはず」と述べた。

 阪神・淡路の後、取り組みが進んだ防災や復興の現状と課題について、参加者が意見を交わした。

 飛田さんは「人のつながりが最大の防災。地域で支え合い、助け合う常設の居場所づくりに取り組んできた。制度が整っても、障害者や外国人らこぼれ落ちる人がいる。防災に格差が生まれている」と指摘した。

 中野さんは「人口が減り要援護者が増える地域では防災も立ちゆかなくなる。健康の視点を取り入れるなど、福祉的支援が必要な人を増やさないことだ」と語った。その上で「災害が多発する中、明るい復興像を描くだけでなく、住民の合意を得ながら、地域を閉じていく『尊厳ある縮退』をオープンに語り合う場も必要だ」と提言した。

 高森さんは「『いつか』ではなく『いま』のために取り組むことが大切で、防災につながる。尊厳ある復興には、ただ災害から生き延びるのではなく『健康で文化的な生活』を大事にしなければ」と述べるなど、議論は尽きなかった。

 「1・17未来会議」は今後も会合を重ね、新たな市民社会に向けてのメッセージの発信を目指す。

(長沼隆之)