兵庫県立の直営10病院は2024年度、県の一般会計から繰入金を受けても128億5千万円の赤字を出した。同年度末の累積赤字は628億5千万円。「県の補助金を増やせばいい」との声があるが、どうか。
25年度当初予算で、県の借金にあたる(実質的な)県債残高は3兆924億円。この5年で0・9%しか減っていない。収入に対する借金返済の割合を示す「実質公債費比率」は25年度までの3カ年平均で19・8%となる見通しで、26年度からは県債発行に国の許可が必要な起債許可団体になるのは確実という。さらに同年度以降は収支不足も見込まれる。借金運営の病院事業を助けようにも、ない袖は振れない。
23年度から起債許可団体となった新潟県もまた、病院経営に苦しんでいた。
冬は3メートルを超える雪が積もる山あいに、その病院はあった。新潟県十日町市の県立松代(まつだい)病院。病床40床を来春なくし、約15キロ離れた県立十日町病院(275床)に入院機能を統合する方針という。24年度の病床稼働率は65・8%で、85歳以上が多い。「包括的な対応ができる十日町での受け入れが適切」というのが、県病院局の説明だった。
ただ、十日町病院は遠く、山の向こうにある。車を運転できなければ通院は厳しいため、内科の外来や訪問診療などの機能を残し、診療所に変えるという。
松代病院の吉嶺文俊院長は「理想の医療というのはあるが、それを言っている時間的な余裕はない。今やるべきことは何か、それに集中していく」と話した。
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さらに、同県三条市に車で入ると、見えてきた大きな建物に衝撃を受けた。
まだ使えそうな病院の解体工事が始まっていた。その旧三条総合病院は再編統合に伴い昨年閉院した。運営していた新潟県厚生農業協同組合連合会もまた、病床再編を急いでいた。(霍見真一郎)
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