神戸地裁=神戸市中央区橘通2
神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 宝塚市の民家で2020年6月、母と弟、祖母の3人にクロスボウ(洋弓銃)を撃って殺害し、伯母にも重傷を負わせたとして、殺人と殺人未遂の罪に問われた無職野津英滉被告(28)の裁判員裁判の判決公判が31日、神戸地裁であり、松田道別裁判長は無期懲役(求刑死刑)を言い渡した。弁護側は、発達障害の影響で判断能力が著しく低下した「心神耗弱」の状態だったなどとして懲役25年が妥当だと主張していた。

 被告は4人殺傷の行為を認めており、責任能力の程度と量刑が争点となっていた。

 被告の精神鑑定を担当した医師2人は、いずれも自閉スペクトラム症(ASD)と強迫性障害があったと証言。検察側と弁護側で、その特性が事件にどう関連したかが争われていた。

 検察側は、症状は重くなく、家族への不満を背景にした動機も理解可能で、完全責任能力があったと主張。頭付近に矢を命中させた残虐さなどを踏まえ、死刑を求めていた。

 一方で弁護側は、「1か0かという極端な思考に陥りやすいASDの特性が動機形成に強く影響した」などと主張。過去の同種事件と比べて悪質性は低いなどとして減軽を求めていた。

 被告は公判で、家庭環境への不満を募らせ、家族を殺して死刑になり、間接的に自殺しようとしたと説明していた。事件への後悔について「ありません」と答え、「このまま早く死刑になりたい」と述べていた。