今日も予定通りだ。午後1時半きっかり、入店はいつもと同じ西側の入り口から。
昨年12月の土曜日。山本幹太(かんた)さん(22)と母親の春名さん(52)、父親の浩史(ひろし)さん(55)は丹波市中心部の商業施設にいた。年末で客は多く、館内放送のジングルベルが聞こえる。
とはいっても、幹太さんの動きに季節は関係ない。「どの店に行くか、順番もルートも、もう全部決まっているんです」。春名さんが説明する。
幹太さんは周囲からの刺激を遮断するためイヤホンをつけ、おもちゃ店に向かう。それから家電量販店、2階へ上がり百円均一店、文具店、ゲームセンター、1階へ降りてスーパーへ。両親は離れたり近づいたりしながら、自分たちの用事を済ませていく。
幹太さんは時々、商品棚の前で立ち止まり、「どうしようかな。ホラーマンがない」などとつぶやく。お目当ては国民的キャラクター「アンパンマン」の文具やお菓子。幼い頃からずっと愛しているアニメ作品だ。「幹太が決めたらええやん」と両親。その口調は穏やかだ。
山本家では長年こうした光景が毎週末繰り返されている。固定されたスケジュール、定型の行動パターン、時折の小さな変化…。これらは幹太さんの特性による面が大きい。
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幹太さんには、自閉スペクトラム症(ASD)と知的障害がある。ASDはかつて「アスペルガー症候群」「自閉症」と分類された発達障害で、一人一人特性に差はあるが、コミュニケーションや対人関係が苦手だったり、反復的な行動、興味関心の偏りがあったりすることが多い。
幹太さんの場合、何より予期しない状況の変化が苦手で、あらかじめ決めた予定に強くこだわり、ルーティンがいくつもある。
別のある週末、ゴルフを楽しんだ浩史さんは夕方6時20分ごろに帰宅し、幹太さんからひどく責められた。6時半からアニメ「サザエさん」を家族そろってテレビで視聴するのが幹太さんの中での決まり事なのだ。
「どういうつもりだよう!」「まだ間に合うし、そないに怒らんでも…」
思い出して浩史さんがふふっと笑う。息子の障害が分かったのは2歳頃。「それから20年、ずっとそんな生活。窮屈なようで、慣れてしまえば心地よい」
他の家庭なら子どもが独立し、自分の時間を満喫できる頃だろう。見方を変えれば、幹太さんのおかげで家族一緒の時間が約束されているとも言える。
春名さんと浩史さんはこう口をそろえる。
「幸せの形は本当に人それぞれ。自分たちは幸せ」
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幹太さんが生まれたばかりの時、両親は「普通」の家族の幸せを思い描いた。そのイメージはやがて砕け散る。だが、家族や周囲は悲嘆したり、戸惑ったりしつつも、幹太さんからポジティブな影響を受け取るようになる。障害とは何か、幸せとは何か。幹太さんの力を借りて考えていきたい。(那谷享平)























