明石城跡の櫓を借景に組まれた屋根付きの移動式能舞台=2019年9月、兵庫県立明石公園
明石城跡の櫓を借景に組まれた屋根付きの移動式能舞台=2019年9月、兵庫県立明石公園

 兵庫県の外郭団体「県園芸・公園協会」(明石市)が、約1億2千万円を投じて整備した移動式能舞台の屋根が老朽化のため昨年度ひっそり廃棄された。組み立て・解体だけで少なくとも300万円かかり、県立明石公園で催される明石薪能で幽玄の世界を演出してきたがその他の利用は進まず、活用は20年間でわずか28回。関係者からは「そもそも必要だったのか?」と過去の金銭感覚を問う声も漏れる。(松本寿美子)

 屋根付きの移動式能舞台は2007年度、同公園が県立都市公園となって90年を契機に全国で初めて整備された。ヒノキ材の床に、ヒノキで覆った鉄骨の柱を立て、強化プラスチック製の檜皮葺風の屋根をかぶせたもので、橋掛かり(通路)や鏡の間(舞台袖)もあり、同公園内の収納庫に保管されていた。

 組み立てには数日間クレーンによる大がかりな作業が必要で、300万円余りかかる。同協会は3分の2にあたる200万円を上限に補助を設けていたが、一般の芸術団体による利用は進まず、1回の組み立てで前後にコンサートなどで使用し、28回計48イベントでの活用にとどまる。そのうち明石薪能は16回を数える。

 明石薪能は、24年には既に老朽化や費用高騰のため屋根なしで上演。25年は雨天で中止になり、今年は連続中止のリスクを避けるため、明石市民会館で3日、屋内開催される。

 主催者で明石市の外郭団体に事務局がある「明石薪能の会」の谷吉將会長(65)は「石垣と櫓の城跡を借景にした屋根付きの能舞台は抜群に格好良かったが、とにかくお金がかかりすぎた」。組み立て費は近年修繕しながら使用していたため500万円余りに上っていたといい「なぜあんな造りになったのか。全体が重すぎた。イベント用に簡易にすべきだった」と話す。

 同会は来年以降も残る部材(鏡板など)を活用しながら、基本的には同公園で薪能を続けていくという。

 同協会の首藤健一常務理事(58)は「全国に前例がなく、当時は『どうせ造るなら』と本物の風格に近いイミテーションを求めたのでしょうが、工夫の余地はあったのではないか。次があれば前例を教訓に同じようには造らないでしょう」と話している。