試合後に挨拶する神戸の吉田孝行監督=30日午後、神戸市兵庫区のノエビアスタジアム神戸(撮影・丸山桃奈)
試合後に挨拶する神戸の吉田孝行監督=30日午後、神戸市兵庫区のノエビアスタジアム神戸(撮影・丸山桃奈)

 3年半、ぶれずに己のサッカーを貫いてきた。J1神戸の今季ホーム最終戦で、退任を明らかにした吉田孝行監督。3度目の指揮は、どん底からの船出だった。

 神戸が最下位に低迷した2022年途中、「すべて責任をとる」と覚悟。球際などの強度を高め、前線からプレスをかけて速攻につなげる形を確立した。同年に残留すると、翌23年にJ1リーグ初優勝、昨年は連覇と天皇杯の2冠を遂げた。

 相手の分析のため休日を返上してパソコンと向き合い、ミーティングの資料は自ら作成。コーチ時代にネルシーニョ元監督から学んだ「きょう言わなきゃいけないことはきょう言え」との教えを守る。「人の気持ちは考えるが、プレーの善しあしはうそ偽りなく伝える」。基準に満たなければ、世界的名手でも批判を覚悟で先発から外した。

 滝川第二高を卒業前の1995年、阪神・淡路大震災を経験。同年にJリーグ入りし、神戸でも6季在籍した。選手時代以上に重圧を感じる指揮官としては、「勝つことで人々に勇気をもたらす存在になり続ける」という使命があった。「毎試合決勝のつもり」と目前の一戦に懸け、三つのタイトルをもたらした。

 今季こそ無冠に終わったが、主将の山川哲史は「みんなとよく話すが、選手もタカさん(吉田監督)も一緒に成長してきた実感がある」と言う。神戸を救い、歓喜をもたらした名将が、惜しまれながらチームを去る。(井川朋宏)