「知らないことがたくさんあります」。兵庫県加古川市に新設される小中一貫の義務教育学校「両荘みらい学園」への統合により、2023年度で閉校となる平荘小学校(同市平荘町山角)の児童会メンバーが、市教育委員会に電話をかけ、説明と質疑応答の機会を設けてほしいと嘆願した。伝統の狂言学習など楽しみにしてきた取り組みがこの先どうなるのか、不安だったからだ。児童の願いは実現し、6日の高学年集会に市教委の担当者を迎えた。(増井哲夫)
市は20年7月、平荘小、上荘小、両荘中を統合し、小中一貫校を24年度に設置する方針を決定。20年11月には関係者による開校準備委員会が発足。両荘中を増改築した校舎の配置、スクールバス運行、標準服など、次々と決まっている。
ただ、児童たちには疑問が渦巻いていた。
「校長先生、私たちは両荘みらい学園についてあまりわからないので、お話を聞きたいのですが…」。今年5月12日、平荘小の校長室を児童会メンバー6人が訪ね、代表で6年高橋新(あらた)さん(11)が切り出した。
高橋さんは自宅で父母に「通学路とかどうなるのかな?」と打ち明けていた。「先生に聞いてみたら」と父母。児童会メンバーに相談すると、同じ思いを抱えていた。「市教委の人に話を聞きたいと提案してみよう」。話し合う中でそんな思いが広がった。
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「知りたいと思ったことについて、行動に移せるのはすごいと思った」と進藤香代校長(59)。どんなことを尋ねたいのか聞くと、知っているのは学校の場所やバス通学もあること、公民館の併設ぐらいだという。「6年の狂言学習は先輩から受け継いできたもの。今年の5年生はできなくなるのでしょうか?」。児童たちの不安を受け、進藤校長が「市教委の人に教えてもらえるようお願いしてみる?」と持ちかけた。
校長室の電話で学校教育課につないでもらい、受話器を手にした高橋さん。両荘みらい学園について「知らないことがたくさんあります。高学年集会で説明して、質問に答えてもらえませんか?」と切り出した。「電話をくれてありがとう。ぜひ皆さんに話したい」と返ってきた。
電話中、他の児童会メンバーは手を合わせて額にあて、うまくいくよう祈っていた。電話を代わった進藤校長が腕で「○」を作ると、歓声と拍手が響いた。
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高学年集会には、電話を受けた学校教育課の荒井英樹さん(36)が出席。4~6年生約80人が参加した。荒井さんは両荘みらい学園の動画やイメージ図を示し、2階建て図書室が紹介されると歓声が上がった。
質疑応答では「6年生ですが来年の入学式は?」など二つ質問が出たところで時間切れに。肝心の質問ができなかった児童会メンバーだったが「新しい学校のイメージが持てた。また話を聞きたい」と笑顔だった。荒井さんも「2学期あたりにもう一度こうした機会が持てたら」と話した。