円安を巡る高市早苗首相の主な発言
 円安を巡る高市早苗首相の主な発言

 高市早苗首相は1月31日の川崎市での演説で「円安で外為特会(外国為替資金特別会計)の運用もホクホク状態だ」と発言した。政府の外貨資産の運用益が増えている利点をアピールしたが、物価高など円安のデメリットには触れなかった。過度な円安を政府としてけん制している中で、市場では首相が足元の円安を容認したとの受け止めが広がっている。

 首相は演説で、国内投資の促進を訴え「民主党政権時はたしか1ドル=70円台の超円高。日本で物をつくって輸出しても売れないから日本企業は海外に出て行ってしまった」と述べた。「今円安だから悪いと言われるけれども輸出産業にとっては大チャンス」と強調。「円高がいいのか円安がいいのか分からない」とも述べた。

 2月1日には、自身のX(旧ツイッター)で「円安メリットを強調したわけではない」と弁明。「足元の円安ではエネルギーや食品など物価高が課題で、政府として対応すべきなのは当然」と火消ししたが、野党からは国民生活を顧みない発言だと批判が相次いだ。

 円安は輸出企業の業績向上やインバウンド(訪日客)増加に寄与する。自動車メーカーなどはトランプ米政権の関税措置による悪影響を一部吸収できた面がある。好業績に支えられ、株価も上昇傾向だ。一方、食料品やエネルギーの輸入コストは上昇し、家計負担は重くなる。原材料費の高騰で、経営難となる中小企業も出てきている。

 2日の東京外国為替市場の円相場は首相発言を受けて円売りが進み、一時1ドル=155円台半ばを付け、前週末から1円以上円安になった。首相の積極財政路線の影響で1月に159円台まで進んだ円安傾向を食い止めようと、片山さつき財務相らが市場を再三けん制し、円高方向に落ち着き始めたばかりだった。

 首相が言及した外為特会は特別会計の一つで、為替介入などの原資として外貨建て資産を管理している。円安を背景に、保有する米国債などの利子収入が増え、2024年度の剰余金は5兆3603億円と公表開始以来で最も多かった。剰余金は防衛費の財源などに使われている。野党からはこれまでたびたび剰余金を減税策の財源に使うべきだとの主張があったが、為替変動のリスクなどを理由に政府内では慎重意見が根強い。