「収録中は、皆さんの学生時代の話で盛り上がった」と笑顔で話す市ノ瀬加那
 「収録中は、皆さんの学生時代の話で盛り上がった」と笑顔で話す市ノ瀬加那

 引っ込み思案な女子高校生の恋と成長を描くテレビアニメ「ハニーレモンソーダ」が、フジテレビなどで9日未明にスタートする。内向的な性格で、中学時代は「石」というあだ名で呼ばれていたヒロイン・石森羽花は、自分を変えたい一心で自由な校風の八美津高校に進学する。期待と不安に揺れる羽花の隣の席に座ったのは、街で出会って以来、憧れていた「レモン色の髪の男子」三浦界。クールな中に優しさを秘めた界の存在が、羽花の日常を大きく変えていく。

 界への恋心を原動力に成長していく羽花の声を担当するのは、声優の市ノ瀬加那。内気だが折れない心を持ち、一歩ずつ前に進み続ける羽花に「演じながら元気をもらった」という市ノ瀬に、作品の魅力や、役作りで心がけたことを聞いた。

 【いちのせ・かな】北海道出身。主な出演作に「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(スレッタ・マーキュリー)、「葬送のフリーレン」(フェルン)など。

(1)青春の甘酸っぱさ

▼記者 物語のどんなところに魅力を感じましたか。

●市ノ瀬 オーディションを受けることが決まって、原作を読ませていただきました。タイトル通り、甘いだけじゃなくてほろ苦さもある物語で、青春の甘酸っぱさを感じます。毎回、続きが気になる展開なので、いつの間にかオーディションのことを忘れて、夢中になって読み込んでしまいました(笑)。

▼記者 演じる羽花は「引っ込み思案な自分を変えたい」と一念発起して華やかな八美津高校に進学した女子高校生です。役作りで意識したことは。

●市ノ瀬 常に精いっぱいで真っすぐなところですね。しんの強さは一貫して意識しつつ、さまざまな経験をする中で、ふとそれが揺らいでしまうような瞬間も大切にして。私自身、羽花ちゃんに似てる部分も多いなと感じたので、寄り添うような気持ちで演じました。

▼記者  どんなところが似ていると感じますか。

●市ノ瀬 昔の私は人見知りというか、人は好きだし、コミュニケーションを取りたいんだけど、うまくいかないという感じで。羽花ちゃんも「変わりたい」と思って一生懸命進んでいく中で、焦って空回りしちゃうところに自分と近いものを感じました。

▼記者 内向的ではあるけど、人一倍ガッツはあるんですよね、羽花ちゃん。

●市ノ瀬 そう!特に界くんと出会ってからは自分なりに変わるための努力もしていて、羽花ちゃんの中にはすごくいろんな感情が湧き上がってるんですよ。でも、それが周りにうまく伝わらない。

▼記者 確かに前半は声に出して言うせりふより、モノローグ(心の声)が圧倒的に多いですね。

●市ノ瀬 ただ難しいのが、そこで「心の中だから」って感情をしっかり出しすぎると、後半にかけての羽花ちゃんの変化が見ている人に伝わりづらくなってしまう、とディレクション(演技指導)を頂いて。しっかり決めにいきたいモノローグでも、決めすぎないようにして、皆さんのお芝居も聴きつつバランスを探っていきました。

(2)作り込みすぎず、自然に

▼記者 界役の矢野奨吾さんはじめ、共演者の方とはどんなお話をしましたか。

●市ノ瀬 高校のお話なので、皆さんの学生時代はどうだったっていう話がよく出ました。主に男性陣が中心となってお話ししてくださって、私はそれを聞いて楽しんでいました。矢野さんとはこの作品が初共演だったんですが、すごく優しい方で。界くんも一見冷たく見えるけど根は優しいという役なので、矢野さんが演じることで、界くんの優しさがより生きるような感覚がありました。私も矢野さんのお芝居を聴くことで、自然と羽花ちゃんになれました。

▼記者 矢野さんとの掛け合いの中で、事前の演技プランが変化することもあったのでしょうか。

●市ノ瀬 今回はあまりプランを立てすぎないようにしていて。6~7割くらい自分の中で、羽花ちゃんの心情はこうかなって固めていくんですけど。界くんはあえて冷たく突き放すようなところもあるんですが、その「冷たさ」もどこか優しく聞こえることもあれば、本当にグサっとくることもあって。現場全体がナチュラルなお芝居だったこともあって、あまり作り込みすぎない姿勢で、この現場には臨んでいました。

▼記者 現場によって事前の作り込みを変えているんですか?

●市ノ瀬 あんまり意識してるわけではないんですけど、そうですね。作品やキャラクターによって少しずつ変わっていると思います。

(3)刺激をくれるのは「仕事」

▼記者 作中で羽花が界のことを「(甘いだけじゃない)刺激物」と表現しています。市ノ瀬さんにとって、自身を成長させてくれる「刺激」とは?

●市ノ瀬 やっぱり仕事ですね…ひねりがないけど。デビューして間もない頃は人見知りだった自分が、この仕事を通じてすごく成長させていただいたなって。周りに尊敬できる方しかいない世界なので、その背中を追いかけて前に進もうって刺激を受けています。

▼記者 元々アニメが好きで、夢をかなえてこの世界に入ってこられた市ノ瀬さんならではのお答えだと思います。

●市ノ瀬 でも、かなえてからの方が大変だなって思う瞬間も多いです。夢の段階だときらきらしたものが、仕事になるとそうじゃない部分もあるので。現実と向き合うのは時に苦しいと思うこともあるんですけど、やりたい仕事だったので、苦しさ含めてこの仕事が好きだなと思います。

▼記者 2025年はどんな年にしたいですか。

●市ノ瀬 成長したいです。ここ数年、たくさんの方が注目してくださる役を演じたこともあって、少しは成長できた部分もあると思うんですが、まだ全然足りなくて。もっと自分のレベルを上げていかなければいけないと感じたので、羽花ちゃんのように真っすぐ前に進んでいきたいです。

▼記者 挑戦したい役はありますか?

●市ノ瀬 今までは主人公サイドの役をやることが多かったので、悪い方をやってみたいです。

▼記者 ありがとうございます。改めてアニメ「ハニーレモンソーダ」の見どころをお願いします。

●市ノ瀬 羽花ちゃんを見ていると「一歩ずつでもいいから自分なりに進もう」って背中を押してもらえる感覚があります。ベースはラブコメで、キュンキュンする場面もたくさんあるんですけど、それだけじゃなくて、見ている人に前向きな気持ちを与えてくれる作品なので、年齢、性別問わず楽しんでほしいです。私も羽花ちゃんを演じながら、たくさん元気をもらいました。

※アニメ「ハニーレモンソーダ」はフジテレビで9日午前0時55分から放送。動画配信サービス「FOD」でも同時配信。その他の放送・配信予定はアニメの公式サイトで