大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を巡り、生態系や景観への悪影響を懸念する声が高まっている北海道釧路市の議会で、10キロワット以上の事業用太陽光発電施設の設置を許可制にする条例が可決された。事業者と市との事前協議を求めるほか、野生生物の調査などを義務付ける。
同市では、国の特別天然記念物タンチョウや天然記念物オジロワシなど希少な生物が生息する釧路湿原国立公園の周辺などで、太陽光発電施設の建設が相次ぐ。条例は来年以降に着工する事業に適用される。開発に一定の歯止めをかけ、環境保全につながることが期待される。
湿原の近くでは、大阪の事業者が約4・2ヘクタールの敷地にソーラーパネル6600枚を置く発電施設の建設を進めている。現地では希少生物が確認されており、文化庁が文化財保護法に抵触する可能性を指摘した。北海道も今月、森林法で定めた許可を得ずに工事を進めたとして森林区域での工事中止を勧告した。
事業者は工事を中断する一方で、計画は適法だと主張し、中止しない意向を示している。釧路市の条例は既に着工したこの事業には適用されないが、事業者側は制定の趣旨を理解し、生態系が壊されないよう市と十分に協議してもらいたい。
メガソーラーに対しては、全国各地で防災面を含めた環境への影響が問題視されている。兵庫県は2017年に都道府県としては初めて、太陽光発電施設の設置規制条例を施行した。昨年10月には、許可制の導入や罰金の引き上げなどの規制強化に踏み込んだ。同様の規制に関する条例は全国で300を超える。釧路市や福島市は「ノーモアメガソーラー宣言」を出している。
しかし現行法での自治体の対応には限界があるとされる。鶴間秀典釧路市長も「条例だけでは難しい」とし、自治体が規制できる法整備を国に求める。政府は今月に環境省や経済産業省など、太陽光発電施設の関係省庁による連絡会議を初めて開いた。議論を進め、実効性のある法的な対応を急ぐ必要がある。
ただ、太陽光や風力を利用する再生可能エネルギーの拡大は、地球温暖化防止に向けた温室効果ガス削減に欠かせない。政府は電源全体に占める再エネの割合を、現在の2割程度から40年度に4~5割程度にする目標を掲げる。「脱炭素」は国際社会で取り組む喫緊の課題である。
目標実現には、軽くて折り曲げられる次世代の「ペロブスカイト太陽電池」の実用化などが鍵となる。大規模施設だけに頼らず、建物の屋根や壁面を使った発電などを広げたい。工夫を重ね、環境保全と両立する再エネ促進策を探らねばならない。