フリーとなって相次いで刊行した著作群。ビジネス書の中に内橋の取材のエッセンスが盛り込まれている
フリーとなって相次いで刊行した著作群。ビジネス書の中に内橋の取材のエッセンスが盛り込まれている

 公団住宅4階の部屋でいつもの時間に目を覚ました。トイレの小窓から見える細い道をサラリーマンが駅へ急ぐ。「陸続と連なる行列のなかのどの顔も確信に満ちており、しっかりとした足どりで、自らが向かうべきところへ向かっているように見えた。どこかに属していることの平穏と颯爽(さっそう)」。1964(昭和39)年、31歳で神戸新聞を辞め、東京に移り、フリーランスとして活動を始めた頃を内橋克人は振り返っている(「本の話」98年4月号)。