2025年は、国際社会の平和と安全を維持する目的で国連が創設されて80年の節目だった。しかし、各地で戦争や紛争はやまず、国際秩序や民主主義を軽んじる強権的な政治が猛威を振るっている。
1月、第2次トランプ政権が発足した。歯止め役がおらず、「自国第一」はより露骨になった。国連への拠出金を大幅に削減したほか、貿易赤字を解消するとして日本を含む全ての貿易相手国に一方的に高関税を突きつけた。
中国とは貿易戦争に発展しかねない事態となった。10月の米中首脳会談で高関税のかけ合いを当面回避することで合意したものの、持続的な緊張緩和につながるかは見通せない。
その中国は、台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁に猛反発する。12月には中国軍機が航空自衛隊機にレーダー照射する挑発行為に出た。強硬姿勢は来年も続くだろう。日本は毅然(きぜん)と対応するとともに、中国との意思疎通を図る必要がある。
ロシアによるウクライナ侵攻は4年目に入った。仲介役のトランプ氏は和平案を示したが、ロシア寄りの姿勢が色濃い。米国と欧州各国が連携してロシアに対峙(たいじ)できるかどうかが、和平実現の鍵を握る。
中東情勢は依然、不安定だ。10月、イスラエルとハマスは和平計画の「第1段階」に合意し、停戦が発効した。だが、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへの攻撃を続ける。ガザでは死者が7万1千人を超えた。人道危機を止めるために国際社会の結束が求められる。
韓国では6月の大統領選で革新系の李在明(イジェミョン)氏が勝利した。罷免された保守系の尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領は、昨年の「非常戒厳」宣言を巡って罪に問われ、裁判が進行中だ。
11月にブラジルで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は、「化石燃料からの脱却」に道筋をつけられなかった。温暖化対策を「史上最大の詐欺」と称するトランプ氏は会議を欠席した。
平和の構築や深刻化する地球規模の課題に向き合うには、多国間協調が欠かせない。緊張緩和に日本が果たすべき役割は一層大きくなる。























