自由、平等、国民主権を掲げた米国独立宣言の採択から4日で250年となる。第47代大統領のトランプ氏の下で6月に始まった記念行事は、政治色の強い内容を巡って賛否が鋭く飛び交い、米社会の分断を改めて浮き彫りにしている。深刻なのは大統領が自ら対立をあおり、支持固めに利用していることだ。
独善的な姿勢は国内にとどまらない。民主主義陣営の超大国として、ルールに基づく国際秩序の構築と維持を主導してきた米国は、今や「力による支配」を声高に主張する。国際法を軽視し、領土拡大の野心すら隠さない。
変容する米国とどう向き合うのか。それは、国際社会の平和と安定のために日本が担う役割を考えることにほかならない。
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今年1月、米国によるベネズエラ攻撃とマドゥロ大統領拘束の衝撃が冷めやらない中、米国防総省が公表した国家防衛戦略(NDS)は波紋を呼んだ。
法の支配に基づく国際秩序を、「雲上の城のような空虚な抽象概念に過ぎない」と切って捨てたからである。併せて、日本をはじめとする世界中の同盟国や友好国に対して防衛費を国内総生産(GDP)比5%に引き上げるよう要求した。
NDSに先立って発表された国家安全保障戦略では、トランプ政権は西半球を他国に干渉させない「モンロー主義」に回帰すると表明した。1823年に第5代大統領モンローが唱えた外交方針で、孤立主義とも呼ばれる。
国際協調意に介さず
歴史を振り返れば、米国は建国以来、伝統的に孤立主義を採ってきた。自由と民主主義の名の下に、世界各地の紛争に積極介入するようになるのは第2次世界大戦後である。戦費の増大はやがて財政を圧迫する。2013年、当時のオバマ大統領は「世界の警察官をやめる」と宣言し、多国間協調に軸足を移した。
トランプ政権は、国際協調はおろか自由貿易体制すら自分たちには不利益だと否定し、覆そうとしている。戦後の米国で極めて異質な存在だ。各国に高関税を仕掛けたのは記憶に新しい。米国、中国、ロシアが勢力圏拡大にまい進する時代を、私たちは生きている。
「日米をより豊かにするため、日米同盟の新たな黄金時代を共につくる」。昨年10月、トランプ氏と東京で会談した高市早苗首相は、こう強調した。防衛力の抜本的強化に前のめりな姿勢を見せる。
日本は「資産」生かせ
トランプ大統領は29年1月に任期を終える。仮に次の大統領選で共和党から民主党に政権が移っても、外交政策が「トランプ前」に完全に戻るかどうかは分からない。日本は米国との同盟関係を基軸としながらも、法の支配を守る姿勢を堅持し、多国間連携を通して国際秩序の立て直しに貢献する必要がある。
そこで生きるのは、戦後に日本が平和国家として歩んできた道のりそのものだろう。憲法9条に戦争放棄を明記し、紛争の当事国に一度もなっていない。核なき世界の実現に努力するという非核三原則も含め、国際社会からの信頼につながってきた。外交上の資産と言える。
安全保障環境の厳しさを踏まえれば、抑止力の向上は重要性を増す。高市政権は武器輸出を解禁し、防衛費増額などに向け安保関連3文書の改定を進めている。しかし、軍拡偏重ではアジア地域の緊張を招きかねない。民主主義の国々と重層的な外交を展開することが欠かせない。
米社会の分断の根っこには、格差や不平等に対する人々の不満がある。「自分をないがしろにした」と既存政治家やエリートに抱いた怒りを、「トランプ」という希代のポピュリストが過激な言葉で増幅させた。
米国は多様性ゆえの課題を人権拡大や社会の発展につなげてきた。建国の理念に根差した復元力を、今こそ発揮してほしい。米社会が直面する困難は、日本にとっても決して人ごとではないと肝に銘じたい。























