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訪問診療で笑顔を浮かべる徳永進医師。柔らかな物腰が患者や家族を安心させる=鳥取市内
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訪問診療で笑顔を浮かべる徳永進医師。柔らかな物腰が患者や家族を安心させる=鳥取市内

訪問診療で笑顔を浮かべる徳永進医師。柔らかな物腰が患者や家族を安心させる=鳥取市内

訪問診療で笑顔を浮かべる徳永進医師。柔らかな物腰が患者や家族を安心させる=鳥取市内

 「死は痛々しいもの。その部分を隠して、家で死ぬのを美化してはいけないよ」

 私たちは鳥取市の「野の花診療所」院長、徳永進医師(71)の言葉に、はっとさせられた。

 徳永医師は訪問診療で、患者が自宅で安らかな死を迎えられるよう、力を尽くしてきた。その一方で、容体が急変したり家族の不安が増したりして、病院に再入院する患者を何人も見てきた。

 在宅死の穏やかな側面だけ取り上げられることには違和感を覚える。「死に美を持ち込むのは、ほどほどにしてよって思うね」

 死は痛々しいもの。どんなときにそう感じるのだろう。私たちの問い掛けに、徳永医師が柔らかな笑顔で答えてくれた。

 「例えば、自宅から入院に切り替えるとか、緩和ケア病棟に入るとか、患者はそのとき、そのときで選択を迫られる。医者とけんかすることもある。そして死にたどり着く。つらいよね」

 「死が近づくと呼吸の様子が変わるんだけど、それだって本人は分かってて『あっ、このまま死ぬんかー』と思うかもしれないしね」。つぶやくように、言葉を続けた。

 「家に帰ろうよ」。私たちは小野市で、家族からそう言われ、自宅で最期を迎えた人たちに出会った。

 現実には、家で亡くなる人は少数だ。全国で2017年に死亡した約134万人のうち、自宅で息を引き取ったのは約17万7千人にすぎない。4人に3人は病院のベッドで死を迎えている。

 「家で死ぬことはできますよ。支える家族や医師、ヘルパーの気合がいりますけどね」と徳永医師。

 「患者は自宅に戻るのを『迷惑かけたくない』って自重してしまうんですよね。でも、迷惑って大切な言葉なんですよ。迷惑はみんなが助け合うことにつながるわけですから」。そう言って、にこやかな表情を浮かべた。

 徳永医師が診療所を開いてから12月で丸18年になる。この間、自宅でみとった患者は約650人に上る。

 私たち取材班のもとに、読者からたくさんの手紙やメールが届いています。次回はその一部を紹介します。

2019/8/24
 

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