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神戸・北区5人殺傷事件

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 神戸市北区で7月、男女5人が殺傷された事件は16日で発生から1カ月を迎える。祖父母への殺人容疑などで逮捕された男(26)は兵庫県警有馬署捜査本部の聴取に5人を襲ったことを認めているが、動機について同本部は絞り切れていないという。これまでの調べで「お告げ」を示唆したり、自身の境遇や家族への不満を漏らしたりしており、捜査関係者からは「どこまでが本心なのか確証を得るのが難しい」との声も聞こえる。

■見えない人物像

 「まるで『デイトレーダー』(株で短期取引を繰り返す個人投資家)の部屋だった。アイドルの熱狂的なファンという雰囲気ではない」。自宅2階の男の部屋について捜査関係者が明かした。

 複数のモニターが付いたデスクトップ型パソコンが置かれ、稼働していないパソコンもあった。コンピューターのプログラミングや株取引の専門書のほか、ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーの生涯をつづった本や宗教に関する本も押収されたという。

 包丁を持っていたとして近くの神社付近で取り押さえられ、「神社に行けばアイドルに会えるとお告げがあった」と話したとされる男。だが、祖父への殺人容疑で逮捕されて以降、お告げについて語ることはないという。

 別の捜査関係者は「押収物を見る限り、事件につながるような特別な思想はうかがえない。雑談では経済やスポーツ、音楽など幅広い趣味や知識をのぞかせている」と語る。

■ありふれた不満

 男は神戸市内の工業高等専門学校を中退し、物流関連の会社に一時勤務した後、同市内の専門学校のコンピューター関連学科に入学。卒業後はIT関連会社に勤め、退職した。事件当時は半年前から無職だったという。

 これまでの調べに「(高専時代に)あまり良い感情はない」「(就職先は)思ったのと違った」などと語り、直近の生活について「家族から仕事に就くよう言われ不満だった」などと話したことが分かっている。

 ただ、これらの発言が事件の核心につながるかどうか確証は得られていないという。5人殺傷を巡っては依然として「誰でも良かった」という趣旨の供述を続けており、同本部は真意を慎重に見極めている。

■異変、察知されず

 男を知る同級生らは「おとなしく勉強熱心だった」と口をそろえる。

 母親は家族間のトラブルについて「思い当たることがない」と説明。高専時代に親しかったという同級の男性は「『家族が厳しい』と漏らしたこともあったが、彼の朗らかな性格から事件は想像できない」と語った。

 関係者によると、事件前に男と連絡を取った中学時代の同級生もいたが、ゲームやアニメなどの話題に終始し、異変は感じなかったという。

 同本部は押収したパソコンやスマートフォンの解析を進めるが、事件を示唆するような記録は現時点で見つかっていない。今後は削除されたインターネットの履歴などについても調べる。

 同本部の聴取に淡々と応じる男について捜査幹部は「事件の重大さは理解しているようだが、ではなぜ行為に及んだのか。物証が少ない中で、どれだけ本心に迫れるかが今後の捜査の焦点になる」としている。

【神戸・北区5人殺傷事件】

 神戸市北区の民家などで7月16日早朝、男女5人が相次いで襲われ、祖父=当時(83)、祖母(83)と、近くの女性(79)の3人が刃物で刺されるなどして死亡、女性2人が負傷した。兵庫県警は現場近くの神社付近で包丁を持っていたとして銃刀法違反容疑で、祖父と同居する孫の男(26)を現行犯逮捕。翌17日に祖父への殺人容疑で、8月7日には祖母への殺人容疑と母親(53)への殺人未遂容疑で男を再逮捕した。

2017/8/16
 

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