「口にしたご飯を、そのまま子猫のもとへ運んでいたんです」
そんな“母の愛”に満ちた行動がSNSで大きな反響を呼んでいます。投稿したのは、保護猫写真家の三吉良典さん(@ryostory1124)。自身のInstagramに公開した動画には、見る人の心を打つ母猫の姿が記録されています。
■「ご飯、食べたらいいのに…」自分より子を想う母猫の姿に反響
背骨が浮き出るほど痩せ細った猫。真夏のある日、三吉さんの元に「やつれた猫がいる」とSNSのフォロワーから連絡が入りました。現地に駆けつけると、そこにはガリガリの猫が一匹。地域住民への聞き取りで飼い主や餌やりがいないことを確認し、ご飯を置いたところ、その猫は食べることなくくわえて立ち去ったといいます。
「隠れて食べるのかと思ったら、倉庫の奥から“ニャーン”という声が。なんと子猫にご飯を運んでいたんです」(三吉さん)
それだけではありません。母猫はその後も子猫たちを食事に呼び寄せ、見守るばかりで、自分はほとんど口をつけませんでした。「母猫も食べていいんだよ」と声をかけたくなるようなその姿に、三吉さんは胸を打たれたといいます。
動画はたちまち拡散され、「母の愛に涙が止まらない」「自分は食べずに子どもに…すごい」「ふっくらした後の姿にホッとした」など多くの感動の声が寄せられました。
■その後の猫たちは…避妊手術を経て、地域で見守られる存在に
母猫と子猫たちは、三吉さんの呼びかけで地域の方々の協力を得ながら、ご飯をしっかり食べられるようになりました。その後、ボランティアの手で避妊・去勢手術が行われ、TNR(※)を実施。現在は元気にふっくらとした体を取り戻し、地域猫として見守られて暮らしています。
※TNR:捕獲(Trap)、不妊手術(Neuter)、元の場所に戻す(Return)の略。地域猫活動の基本的な考え方。
■「行動することで、救える命がある」
三吉さんは「このような出会いを通じて、地域猫の存在やTNR活動を多くの人に知ってもらい、自分にできることを少しずつ行動に移してもらえたら」と話します。
過酷な外の世界で、命がけで子を育てる母猫。その姿は、野良猫を巡る現実の厳しさと、それでもつながっていく命の希望を私たちに教えてくれます。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)