毎日欠かさず捨てられている公園のゴミ…これって犯罪じゃないの? ※画像はイメージです(Phimwilai/stock.adobe.com)
毎日欠かさず捨てられている公園のゴミ…これって犯罪じゃないの? ※画像はイメージです(Phimwilai/stock.adobe.com)

定年退職を迎えたAさんは、毎朝有志で集まった仲間と駅前のゴミ拾いをしています。そしてゴミ拾いを続けているうちに、毎日同じ場所でコーヒーの缶を拾っていることに気が付きました。Aさんは「いつも同じコーヒーの空き缶が同じ場所に…」と思いながら、2カ月以上もこのコーヒーの空き缶を拾っていると、だんだんこの空き缶を捨てている人に憤りを感じるようになります。

また憤りと同時に、「河川敷や山林などで、自転車や家電などを捨てると不法投棄になることは周知の事実なのに、ポイ捨ては罪にならないの?」と疑問に思いました。そこでポイ捨てが犯罪になるのか、弁護士の齊田貴士さんに話を聞きました。

■軽犯罪法や産業廃棄物処理法違反に該当する

ータバコや空き缶などのポイ捨ては犯罪になるのでしょうか?もし罪に問われるとしたら、どのような刑罰になるのでしょうか?

まず軽犯罪法違反に該当する可能性があります。軽犯罪法1条27項に規定されている「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者」のうち、「廃物を棄てた者」に該当するためです。

軽犯罪法違反に問われた場合、情状により刑を免除されることもありますが、拘留(1日以上30日未満、刑事施設(刑務所)に収監させるための刑罰)もしくは科料(1,000円以上10,000円未満の金銭納付を命じる刑事罰)またはこれらが併科されます。刑が軽いように思えますが、いわゆる前科が付くので注意が必要です。

また、産業廃棄物処理法違反にも該当する可能性があります。産業廃棄物処理法16条では「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」と定められていて、廃棄物にはタバコや空き缶なども含まれます。

廃棄物処理法違反の場合、「5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金」に処されます(廃棄物処理法25条1項14号、16条)。さらに、自治体にポイ捨てを禁止する条例があれば、自治体の条例違反にも該当します。

ー車からポイ捨てした場合や河川にポイ捨てした場合は?

車内から外へ物を捨てて、他の車両に損傷を与えるような行為をした場合や交通の危険を生じさせた場合は、道路交通法違反(76条4項)として処罰される可能性があります。76条4項では、次のような行為が禁止されています。

・石、ガラスびん、金属片、その他道路上の人もしくは車両などを損傷するおそれのある物を投げたり、発射すること
・進行中の車両から物を投げること
・道路または交通状況により、公安委員会が道路における交通の危険を生じさせ、著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為

道路交通法違反の場合、「5万円以下の罰金」に処されます(道路交通法120条1項10号)。

また、河川にポイ捨てした場合は、河川を損傷ないし、「汚物又は廃物」を「捨て、又は放置する」行為に該当し、河川法施行令違反(16条の4)として処罰される可能性があります。河川法施行令違反の場合、3ヶ月以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金(59条2号)に処せられる可能性があります。

ータバコのポイ捨てで火事になった場合は?

火事を起こす意図がなく、火事になることも容易に予測できずに火事になった場合は、失火罪に該当し、50万円以下の罰金を科されます。

しかし、火事になることが明確に予測できた状況で、ポイ捨てによって火災を起こした場合は、対象物によって罪が変わり、刑罰も変化します。例えば、人が住んでいない空き家にタバコのポイ捨てをして火災を起こした場合は、非現住建造物放火罪となり、2年以上の有期拘禁刑が科されます。

◆齊田貴士(さいだ・たかし)弁護士
神戸大学法科大学院卒業。弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)