「愛猫との出会いは、ある日突然のことだった」
元保護猫と暮らす飼い主さんの中には、そう振り返る人も少なくありません。茶トラの男の子「おぬし」くん--愛称「おぬくん」も、Xユーザー・おぬどんさん(@Ic9S6)家族との不意の出会いをきっかけに、新しい家族として迎えられました。
■◼️網戸を登ってきた小さな子猫
おぬくんと飼い主さん夫婦が出会ったのは、2022年6月15日のことでした。リビングでくつろいでいると、突然、外から「ニャー」という鳴き声が響いてきたのです。
「ベランダに出ると、小さな茶トラ猫が一生懸命鳴いていました。我が家には犬がいたので飼えないと思い、他の人が保護するか親猫が現れるか様子を見ていましたが、誰も迎えに来なかったんです」
やがて子猫は敷地に入ってきて、網戸をよじ登り始めました。落ちてしまう危険を感じた飼い主さんは慌てて外へ。気づけば発見から2時間以上が経過し、あたりはすっかり暗くなっていたといいます。
「今日だけでも保護しようと思い、家に入れました。知り合いに連絡して猫砂やご飯を用意してもらい、最低限の環境を整えました。とても小さな子で風邪をひいて鼻水もぐずぐず。でもご飯をよく食べ、人への警戒も少なかったです」
■里親探しの厳しい現実ーー心境の変化が
翌日、動物病院を受診すると生後推定3カ月であることが判明しました。ノミやダニの駆除薬、風邪の薬が処方され、治療が始まりました。
「名前をつけたいと思い、響きがかわいらしく、叱っても許してしまいそうな名前にしました。それが“おぬし”です。その後、顔を拭いてあげたらとてもかわいらしく見えて、『この子はきっと里親希望がすぐ現れるだろう』と思ったんです」
そこで譲渡会にも足を運びました。しかし会場には小さな子猫がたくさんおり、それでも新しい家族が決まっていない子ばかりでした。
「スタッフの方からも『これ以上引き受けるのは難しい』と言われました。妻の両親は『うちで迎えるよ。いつ連れてきてもいいよ』と言ってくれましたが、一緒に過ごすうちに手放せなくなり、そのまま我が家の子になりました」
■先住犬との関係、そして“子ども”のような存在に
家に迎えた当初から、おぬくんは活発で頭の良さを見せました。
「最初は犬用のケージに入っていましたが、すぐに上から抜け出すようになり、小さいのに賢いなと感心しました」
一方で、抱っこが苦手なため爪切りには苦労。夫婦ともに引っかき傷が絶えなかったといいます。
「実は私は猫アレルギーで、引っかかれると腫れてしまうこともありました」
さらに先住犬のトイプードルとは、最初は追いかけっこばかり。
「おぬくんが幼い頃は犬を追いかけ回して、犬が必死に逃げていました。でも今では落ち着いて、互いに嫌がることもなく穏やかに過ごしています」
元気に飛び出す姿や犬とじゃれ合う光景は、夫婦にとって日々の癒やしになりました。ちょっとした仕草や表情にも自然と笑みがこぼれるようになったそうです。
「クローゼットやリビングのドアなどを自分で開けられるようになり、自由に行きたい場所へ行けるようになったころから、すっかり家に馴染みました。そのため、玄関から出てしまわないか不安で、今はリビングのドアに脱走防止用の柵を設置しています」
飼い主さん夫婦にとって、おぬくんはまさに“我が子”のような存在になりました。
「おぬくんを子どものようにかわいがっています。夫婦の会話も自然と増え、スーパーでおやつやご飯を選ぶ時間も真剣そのもの。それも日々の楽しみのひとつになっています」
■◼️優しく頼もしい“お兄ちゃん”になったおぬくん
現在、おぬくんは3歳を迎えました。幼い頃には見られなかった臆病な面も出てきたといいます。
「インターホンや他人の声に敏感で、今では毎回クローゼットに隠れる臆病な性格です」
しかし、のちに保護した子猫「どん兵衛」ちゃんが加わってからは、優しいお兄ちゃんとしての一面を見せています。
「おやつやおもちゃを譲る場面がとても増えました。ただおぬくんも寂しいのか、時折テーブルの物を落として注目を引こうとすることもあります」
今、飼い主さんからのおぬくんへ伝えたいメッセージとはーー
「おぬくんが我が家に来てくれて毎日癒やされています。いつも優しいお兄ちゃんをしてくれてありがとう。でもおぬくんも私たちからしたら子ども。たまには甘えてね」
茶トラの小さな子猫が偶然ベランダに姿を見せた日から始まった物語。おぬくんは今、かけがえのない家族として日常に幸せを運び続けています。
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)