娘が突然…
娘が突然…

子どもは時に、大人が想像もしていなかった言葉を口にします。無邪気なはずのその一言が、親の心を冷ややかに凍らせることもあります。推理小説が好きな娘をもつ新潟県在住のNさん(40代)は、娘が発した「完全犯罪をしてみたい」という衝撃の一言にたじろぎました。

■推理小説好きの娘が語った「完全犯罪願望」

Nさんの中学2年の娘は、幼いころから本が好きです。最近はミステリーや推理小説にどっぷりと浸かっています。江戸川乱歩から東野圭吾まで、図書館へ通いつめ、通学バッグには必ず数冊のミステリーが入っているほどです。読書好きは結構なことだと思っていましたが、ある日の夕食時、娘が唐突に言いました。

「完全犯罪って、やってみたいと思わない?」

Nさんは箸を持つ手が止まりました。「え?」と聞き返すと、娘は真剣な顔で言うのです。

「だって誰にも気づかれずにやり遂げるってすごくない?どうやったらバレないんだろう」

もちろん、実際に犯罪を起こそうとしているわけではなく、ただ「推理小説の犯人側の立場」に立って思考実験をしているに過ぎないのでしょう。しかし、あまりに真剣で淡々とした口調に、Nさんは背筋がぞわりとしました。

■親もかつては完全犯罪に憧れたが…

Nさん自身も、推理小説が好きです。かつて「完全犯罪」という言葉に憧れたことがあります。ただしそれは、ハッキングやサイバー犯罪の分野。ネット掲示板で読んだ「暗号化システムを突破する天才高校生ハッカー」などの逸話に、今でも胸をときめかせます。とはいえ、それは映画や小説の中での話。現実世界で実行する勇気や根性、それどころか、そのような技術は持ち合わせていません。

娘も同じだと信じたい一方で、念のため「どんな完全犯罪をやってみたいの?」と聞くと、

「うーん、直接血を見るのはイヤだから…アリバイ作りとかかな」

と返され、心の中で「そこまでリアルに考えなくても」と頭を抱えました。

■夫の「みんながパニックになるところを見たかった」事件

そんな中、Nさんをさらに不安にさせたのは、その話を聞いて、夫が子ども時代のエピソードを語り始めたことでした。結婚当初、義母から聞いて笑い話にしていたのですが、夫が小学生の頃、小学校の火災報知機を押したことがあったそうです。

「なぜ押したのか」と親に問い詰められた夫は、こう答えたといいます。

「みんながパニックになるところを見たかった」

それを聞いた義母は卒倒しそうになり、慌てて育児書を読み漁り、「人の心を育てる絵本」「思いやりを育む童話」などを毎晩夫に読み聞かせたそうです。Nさんは当時笑って「男の子ってそういうところあるよね」などと軽く聞き流していましたが、いざ自分の娘に似た感性を感じると、血の気が引く思いがしました。

■子どもの発言に親がギョッとした瞬間は

子どもの発言に親がギョッとした瞬間ありませんか?

▽埼玉県・小1息子
「ママ、どうしておばあちゃんを殺しちゃダメなの?」
小学1年生の息子が、祖母と同居している友達の家でケンカをした日の帰り道にこうつぶやいたそうです。もちろん息子自身の祖母のことではなく、友達の家にいた“うるさく注意してくるおばあちゃん”に対して「死んだら静かになると思った」だけのようですが、親としてはゾッとする瞬間でした。

▽栃木県・小3娘
小3の娘。カブトムシを幼虫から育てていて、うまく育てられず死んでしまったのですが、「カブトムシじゃなくて、犬とか猫とか死んだらどんな気持ちになるんだろう」と真顔でつぶやいているのを聞いてしまいました。怖くなって倫理観についてわかるように説明したのですが、本人は、テレビで見た動物虐待のニュースがきっかけで、「人はなぜそんなことをするのか」を考えていたとのことでした。

▽富山県・小5息子
保険のCMを見ていた小5の息子が「ママが死んだら、保険金ってもらえるの?」と言い放ちました。無邪気な顔で質問されても、親としては背筋が凍りつくことこの上ない瞬間です。

▽福島県・4歳娘
保育園で赤ちゃんが生まれた友達の話を聞いて帰宅するなり、唐突に「ママ、赤ちゃんってどうやってお腹から出すの?」と質問をされました。軽い気持ちで「病院で先生が出してくれるんだよ」と答えると、「どうやって?お腹切るの?痛い?血はいっぱい出る?」と追及が止まらず、夕食の支度中に青ざめました。

▽静岡県・小2娘
家族でドライブ中、小2の娘が、山道を走っているときに後部座席から「この車が今、崖から落ちたらどうなるかな?」と聞こえてきた一言。「やめてよ!」と叫びながらも、想像力豊かな発言にハンドルを強く握りました。

▽埼玉県・小1息子
お手伝いで野菜を切っているとき、6歳の息子が純粋な好奇心で放った「この包丁で刺したら、血いっぱい出る?」という一言。「刺すって誰を!?」と慌てて包丁を取り上げつつも、子どもの空想力に恐怖を覚えました。普段からサスペンスドラマを見ているせいでしょうか。

■子どもの言葉の裏にある成長の証

子どもが突拍子もないことを言うのは、単なる空想力や好奇心の表れであることが多いです。「完全犯罪をしてみたい」という娘の一言に震えたものの、Nさんは娘が今後、探偵側の視点で推理小説を書き上げてくれることを願うばかりです。そしていつか、「昔はそんなこと言ってたね」と笑い合える日が来ると信じています。

子どもの想像力は時に残酷で、親を凍らせるほどのリアリティを持ちます。しかし、その空想の翼をどう現実と折り合いをつけさせるかが、親の役割なのかもしれません。親自身もかつては子どもであり、完全犯罪やパニックを夢想したことがあったことを忘れないようにしたいものです。

(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)