憧れの漫画原作者の予想外な姿に驚く新人漫画家 (真田つづるさんの提供)
憧れの漫画原作者の予想外な姿に驚く新人漫画家 (真田つづるさんの提供)

憧れていた漫画家や歌手、スポーツ選手の素が思っていたものと違った場合、ショックを受ける人は少なくないでしょう。「ヤングアニマル」(白泉社)にて『それでも書きたい有馬くん』を連載中の真田つづるさんの作品『ペンを持て!』は、新人漫画家がファンだった漫画原作者と対面し、想像と違う性格に驚く様子が描かれた一作です。以前X(旧Twitter)に『憧れの漫画家がクズだった』と題して投稿されると、全体で約3000もの「いいね」を獲得しています。

■新人漫画家VS頑固な漫画原作者

出版社に新作を見せにやってきた新人漫画家の「泉 颯太」。編集者「高橋」に絵が向上していることは褒められたものの、「ストーリーは駄目だね つまらないを通り越して虚無」と酷評されてしまいます。

さらに、颯太が漫画原作者「哀川透」のファンだったことを挙げて「影響受けすぎ」と指摘。その言葉をきっかけに颯太は哀川の魅力を熱弁すると、高橋から「そんなに好きなら哀川先生とタッグを組んでみる?」「今ちょうど新連載の作画担当を探しているところなんだ」と提案されます。

驚いて動揺する颯太に対し、高橋は「はいこれ 哀川先生の新連載の文章原作 読みたいでしょ?」「作画担当やるなら読ませてあげる」と続け、颯太は「やります!!」と快諾。

その後、新連載の原稿を読んだ颯太は高橋とともに哀川の家を訪問します。哀川について「ちょっと気難しいけど根は優しい」と事前に聞いていた颯太は、頭の中で“文豪のような大御所”を想像していました。

そして、彼のマンションのインターホンを鳴らすと、しばらく反応がありません。施錠されていなかったので、2人はそのまま中に入ったところ、寝室に原稿の書き途中で眠ったであろう哀川の姿がありました。お酒を飲みつつ横になりながら原稿を書いていたようで、その姿に驚きを隠せない颯太。

高橋が哀川を起こして書き途中の原稿を取り上げて見てみると、新連載の第2話かと思いきや、そこには「働きたくない」と書いてありました。また、高橋に「そいつ誰?」と尋ねる哀川に颯太は自己紹介をするも、「あ~はいはい」と遮って「言っただろ!誰をつれてきても あの話は連載しないって!」と語気を荒げます。

というのも高橋は「誰か気に入った作画がいれば連載する気になってくれるかな~」という魂胆で、これまでに4人の漫画家を哀川のもとにつれてきたとのこと。結局、誰も哀川に認められず、5人目として颯太が選ばれたそうです。

そもそも新連載は高橋が哀川の机から強引に原稿を持っていき、勝手に始めた話でした。そういった経緯もあって哀川は「連載はもうやらない!」と一貫し、仕方なく「この原稿は無かったことにしましょう」と断念する高橋。すると、颯太が「待ってください!」と割って入り、哀川に“新連載の原稿に強い思い入れがあるのでは?”とうったえかけます。

その指摘に対し、哀川は「もう…嫌なんだよ…」「インターネットでボロカスに叩かれるのはよおぉぉ~~~!!」と本音を吐露。連載中にたくさんのアンチコメントが目に入ったことで、精神的なダメージを受けていたのでした。

それでも高橋は「もう叩かれたりしないですって」「見返してやればいいじゃないですか」と優しく声をかけるも、哀川のボルテージが増して第1話の原稿を破ろうとしました。その時、原稿を奪い返した颯太は叩かれたり、打ち切りになってしまう可能性があることを伝えつつ「それでいいじゃないですか!」と持論を展開します。

さらに「この作品を楽しんでくれる人がほんの少しでもいるかもしれない」「それだけで十分 挑戦する価値があると思いませんか?」と続け、最後には「少なくとも俺は先生の作品に救われてきました」「ネットなんかより 俺を見てください!」と熱弁します。しかし、哀川は「知るか!帰れ!!」と2人を追い出します。しかし、少しした後に哀川は「続き 書くか…」とひとりつぶやくのでした。

読者からは「真っ直ぐな颯太に感動した」「素直じゃない哀川も可愛い」などの声が。そこで作者の真田さんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。

■ 「ネットの批判を気にしているところが人間くさくて好き」

-同作をを描いたきっかけを教えてください。

漫画の作画と原作の人間関係って面白いな、ドラマがありそうだなと思ったことです!

-同作の中で、特にお気に入りの場面があれば、理由と一緒にぜひお聞かせください。

ベテランと呼ばれる漫画原作者が、ネットの批判を気にしているところが人間くさくて好きです。

-他にも『同人女の感情』や『同人男の感情』といった作品を描かれていますが、やはり真田さんの同人活動を反映しているのでしょうか?

私自身の経験もありますし、体験談募集やインタビューで教えていただいたエピソードもたくさんあります!

-読者にメッセージをお願いいたします。

漫画を読んでくださってありがとうございます!これからも、創作って良いな、楽しいなという気持ちを発信していきます!

(海川 まこと/漫画収集家)