猫作家・HITOMIKO(ヒトミコ)さんが制作している「やんのかステップ木彫り猫」が猫好きの間でひそかな人気だ。やんのかステップとは、猫が背中を丸めてぴょんぴょんと飛び跳ね、威嚇する仕草のこと。この11月にはカプセルトイとして全国発売(全5種類、こちらは木彫りではなく材質はPVC)されることにもなり、「全種コンプリートしたい」と発売を待ちわびるファンの声も聞かれる。
福岡県糸島市を拠点に活動しているHITOMIKOさんは2019年から、依頼者の愛猫に似せた手のひらサイズの立体猫「ちびーズ」(高さ約8cm、素材はジェスモナイト、オーダーメイド)を制作。その後、立体猫の頭に食べ物などのミニチュアを乗せた「乗せてみニャ」を発売。精緻でユニークな立体猫が猫好きの間で人気を集めてきた。
やんのかステップ木彫り猫を作り始めたのは、2023年夏ころから。ひとかたまりのクスノキから一木造りで猫を掘り出しているのが最大の特長だ。成形後はアクリル絵の具で塗装し、目はカシュー塗料で光沢を出している。
「これまで作ってきた立体猫はお座りポーズの猫。お客さんの猫がモデルで、素材も人工物でした。もっと自分の個性を出した表現がしたい、本当に自分が作りたい猫はどんなものだろうとずっと考えていたんです。そういえば昔、飼っていたモモちゃんがよくやんのかステップをしていたなって思い出し、そのポーズを木彫りで作ってみたところ、これだって思ったんです」(HITOMIKOさん、以下同)
モモちゃんとは、HITOMIKO さんが20代から40代のころ、実家で共に過ごしたシャム柄の愛猫。気性が荒く、甘噛みを知らずに育ったため、腕はいつも傷だらけだったというが、反面、甘えん坊でもあり、HITOMIKOさんの膝の上に1日1回はのぼってきて、1時間くらいずっと動かない、そんな子だったという。
「私が手をモモちゃんの顔の前に近づけると、敵が寄ってきたと思うのか、やんのかステップをしてぴょんぴょんとびはねていたんです(笑)。私が42歳のとき、モモちゃんは22歳で亡くなったのですが、今でもぴょんぴょんとする姿が鮮明に甦ってきます」
やんのかステップ木彫り猫は4タイプがある。「ノーマルやんのか」、頭にスイーツなど1~3個を乗せた「ちょい乗せやんのか」、頭にとんでもなくたくさん乗せた「超乗せやんのか」、頭に超乗せした上で背中に子猫を乗せた「超乗せやんのか親子」だ。
なぜ頭にスイーツなどを乗せているかというと「頭の上に乗せたものが落ちそうで落ちない絶妙なバランス感覚を見て楽しんでもらいたいから。安定していると面白みに欠けると思って(笑)。重力があるので落ちそう、危ない、だけど落ちない、というぎりぎりの状態を表現したかった」とHITOMIKOさん。一木造りなので、頭に乗っているものは接着したわけではなく、猫と一体化しているのがすごい。手に持ってみると木彫りの温かいぬくもりが伝わってくるのも魅力だ。
これまでに60体以上が購入されたが、1週間に1体しか作れないといい、販売は不定期なのが現状。お客さんから「カプセルトイとかになったらいいのに」との声が寄せられたという。
「それを聞いて私もそうなったらいいなと。それで『カプセルトイにするのが夢』ってSNSに綴って、カタログ風にこんな種類がありますと並べて紹介していたんですよね。そうしたら玩具雑貨の製造販売メーカーさんから『ぜひカプセルトイにしたい』との連絡をいただいたんです」
カプセルトイバージョンは、盆栽乗せ、たい焼き乗せ、ゼリー乗せ、ドーナツ乗せとノーマル(にゃん玉付き)の全5種類。やんのかステップ木彫り猫より一回り小さく、材質はポリ塩化ビニル(PVC)。11月に全国で発売予定で、カプセルトイのファンからは「ノーマルのにゃん玉付きがほしい」「コンプリートするまで回して、全種類集めます」など期待の声が寄せられているそうだ。「特に元気がないときなど、やんのかステップ猫を見て、少しでも笑顔になってもらえたら嬉しいです」とHITOMIKOさんは話している。
*やんのかステップ木彫り猫やカプセルトイの情報は、HITOMIKOさんのインスタグラムで。 @hitomikoart
(まいどなニュース特約・西松 宏)