シェーグレン症候群や関節リウマチと生きる、あんじゅさん
シェーグレン症候群や関節リウマチと生きる、あんじゅさん

スマホが日常に溶け込んでいる現代社会では、深刻なドライアイに悩まされている人も多いもの。ただ、「乾燥」という症状が目以外にも現れている場合は、「シェーグレン症候群」という病気である可能性を考慮して一度、病院に相談してほしい。

あんじゅさん(@raworkingmama)は、2020年の秋にシェーグレン症候群を発症。

季節やストレス、ホルモンバランスによって体調に変化が起きやすいシェーグレン症候群との付き合い方を模索してきた。

■「予備軍」と告げられていたから「シェーグレン症候群」に気づけた

シェーグレン症候群は、指定難病。膠原病や関節リウマチなどが併発する「二次性」と、併発しない「一次性」がある。

あんじゅさんは、二次性のシェーグレン症候群だ。2011年に関節リウマチを発症し、血液検査の結果から、「将来的にシェーグレン症候群を発症する可能性がある」と告げられた。

それから7年後の2018年、あんじゅさんは我が子を出産。出産後から、頭痛を伴うドライアイや口内炎とは異なる口腔内の水泡に悩まされ始めた。

そこで、主治医に相談。検査を受け、シェーグレン症候群と診断された。

「2020年の秋に、診断が下りました。私はパソコンと向き合うデスクワークなので、シェーグレン症候群の予備軍だと事前に告げられていなかったら、病気に気づけなかったと思います」

■季節やストレス、ホルモンバランスの変化によって症状が強まることも…

シェーグレン症候群は目や鼻腔、口腔内の乾燥という症状が現れやすいが、倦怠感や記憶力の低下、唾液腺の腫れなどの症状が見られるケースもあるという。あんじゅさんが特に悩まされているのは、口の乾燥だ。

「唇からパリパリと乾燥していくような感覚です。寝起きは特に症状がひどく、唇の裏側も潤っていません」

症状を緩和するため、起床後は真っ先にうがいをして、水を飲む。口腔内の乾燥は虫歯や歯周病のリスクを高めるので、口内ケアにも気を付けている。

自宅では、常に加湿器をオン。体調は季節やストレス、ホルモンバランスによっても変わり、波がある。

1年の中で最も苦しい季節は、夏。紫外線を浴びると、関節の痛みや熱っぽさを感じる。

「汗をかけず、体に熱がこもるのも辛いので、夏はできる限り、日中の外出を避けています。どうしても日中に外出しないといけない時は、肌が出ない服装にしています」

シェーグレン症候群は、現代の医学では根治が難しい。現在は3カ月に1回通院し、関節リウマチとシェーグレン症候群の両方に効果が期待できると言われている薬を服用している。

「濃度が濃い目薬や唾液の分泌を促す薬も服用していますが、体調が悪い時は効果が感じられません。シェーグレン症候群に直接アプローチできる薬が開発されてほしいです」

■自己コントロールだけでは解決できない"当事者の苦しみ"

根治しない病気と生きていかねばならないと、人は絶望してしまうこともある。だが、あんじゅさんは症状やケアなどを知ったことで、冷静に病気と向き合えるようになったという。

病気と上手く付き合っていくために心がけているのは、自分の行動による体調の変化を把握して自己コントロールをすること。体調が悪くなると時期を記録し、原因を自己分析。ストレスになりそうなことはできるだけ避け、生理前後には予定を入れすぎないようにしている。

「思いっきり頑張ったら、翌週はできるだけ何もしないなど、自分に合った仕事のスケジュールを組んでいます。人と会う時期も体調を考慮して決めています」

また、見た目では分からない病気だからこそ、家族や取引先の企業には症状やできること・できないことを積極的に伝えている。

「辛いことを理解してもらうより、してもらえると助かることを伝えるように意識しています。例えば、長いオンラインミーティング中に目が痛くなったら、カメラをオフにして目を閉じながら話を聞くことを許可してもらっています」

我慢しないことを自分に許すという優しい向き合い方で、あんじゅさんは心身を守っているのだ。

「私の場合は前向きに生きる姿を発信することも、セルフケアに繋がっています。『元気が出ました』と言ってもらえると嬉しいし、これからも前向きで生きてこうって思える。ポジティブを伝染させていきたいんです」

■福祉支援の“狭間”に立つ難病者たちの現状

一方、当事者を取り巻く社会はまだまだ厳しい。例えば、就労の問題がある。強い倦怠感などにより、今の日本でスタンダードな1日8時間の労働が難しい当事者は多いようだ。実際、あんじゅさんも1日6時間、自宅で時短勤務をするのが限界だ。

シェーグレン症候群は指定難病ではあるが、障害者手帳の交付は難しく、障害者雇用枠で働くことができない。また、医療受給者証も交付されにくいという。医療受給者証とは、対象者が医療機関を受診した際、医療費の自己負担分を公費で助成してもらうために必要な証明書だ。

あんじゅさんは全身症状があるため交付されたが、心境は複雑。全身症状がない一次性の当事者も福祉支援を受けられ、当事者の間で不公平感が出ない仕組みになってほしいと話す。

「シェーグレン症候群以外にも、障害者には当てはまらず、福祉支援が受けられない難病者はいます。健常者と同じ働き方や生活をクリアしていくしかないと、生きづらさに繋がる。だからこそ、シェーグレン症候群という病気が広く知られることで、障害者と難病者の境界線がなくなるような支援が生まれてほしい」

自己判断が難しい、シェーグレン症候群。気になる症状があれば病院で相談してほしいと、あんじゅさんは訴える。

「ドライアイだけでなく、他の部位の渇きや原因不明の熱、倦怠感などの症状が出ていないかと、日常を振り返ることも早期発見に繋がると思います」

見た目では分からず、福祉支援がまだ手薄なシェーグレン症候群。当事者が自分を責めずに生きていけるよう、病名や症状が広く認知されてほしい。

(まいどなニュース特約・古川 諭香)