ヘブン(トミー・バストウ)に想いを寄せるリヨ(北香那)は、トキ(髙石あかり)を伴って八重垣で恋占いをする (C)NHK
ヘブン(トミー・バストウ)に想いを寄せるリヨ(北香那)は、トキ(髙石あかり)を伴って八重垣で恋占いをする (C)NHK

 今週放送された連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合ほか)第9週「スキップ、ト、ウグイス。」では、強力な“ライバル”・リヨ(北香那)の登場により、トキ(髙石あかり)の気持ちが微かにざわめきだす様子が描かれた。でも、トキ自身はその感情がなんなのか、まだはっきりとは自覚していない。

 島根県知事・江藤(佐野史郎)の愛娘で、東京の女学校を卒業して松江に帰ってきたリヨ。語学堪能で、広い世界への憧れをもつ彼女は、ヘブン(トミー・バストウ)を一目見て気に入る。リヨは、ヘブンの女中として身近にいるトキに、恋の応援をしてほしいと頼む。

 たいてい、ヒロインのライバルとあらば嫌われ役になりそうなところ、リヨの「猪突猛進で思い込みの激しいお嬢様」の突き抜けたキャラクターが絶妙にいい味を出している。こののちトキとヘブンが結ばれることはわかっているのに、思わず応援したくなってしまうほどだ。リヨを演じる北香那の起用理由と、俳優としての魅力について、制作統括の橋爪國臣さんに聞いた。

■ふじきみつ彦いわく「脚本家の希望による配役は物語の創造性を小さくする」

 『ばけばけ』と同じく、ふじきみつ彦さんが脚本を手がけた映画『バイプレイヤーズ ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』のジャスミン役で存在感を発揮していた北。今回の起用も「バイプレイヤーズ」からの流れなのかと思いきや、そうではないのだという。橋爪さんはこう話す。

「ありがたいことに、ふじきさんは基本的にキャスティングに関してスタッフに一任してくださります。『脚本家の希望や過去作との絡みなどで縛りすぎてしまうのは、物語の創造性を小さくする』という考えをお持ちの方で。『この役にはこの俳優さんがいいと思うのですが』という現場の提案を信頼してくださって、『楽しみにしてます』と言ってくださる方です」

■北香那は心の中の「業」を表現できる俳優

「北さんの起用については、『鎌倉殿の13人』のつじ役や、『どうする家康』のお葉役をはじめ、たくさんの作品で印象的なお芝居をされていましたし、演技の巧さについてはもはや説明不要。それから僕は、何といっても北さんの、心のどこかに持っている『業』みたいなものが出せるお芝居が素晴らしいと思っています。今回のリヨという役が、まさにぴったりはまるだろうなと思って、お声がけをしました」

■時代背景的に、リヨとヘブンが結ばれる線もあり得たのではないか

 また、リヨのキャラクターについては、

「実際、当時の島根県知事の御息女でラフカディオ・ハーンとも面識のある方はいらして、その方がハーンにウグイスを贈ったという史実があり、もしかしたら少しハーンに気持ちがあったのかな? と思わせる記録も残っています。それらをヒントに、ふくらませて作劇していますが、基本的にはオリジナルのキャラクターです」

「トキとヘブンのふたりは、気持ちが揺れながら関係性が進んでいくので、その『揺れ』を作る人物を登場させる必要がありました。知事の娘で語学堪能なお嬢様という、トキとはまったく違うキャラクターを投入することで、『時代背景的に見て、ヘブンとリヨが結ばれるという線だってあり得たのではないか』と思わせるようなストーリーにしました」

 と語った。今後ますますトキとヘブンの仲を「揺さぶって」いくリヨの活躍に期待したい。

(まいどなニュース特約・佐野 華英)